第21話 リア・クラークは授業の予定が記載されたカレンダーを受け取り『スキル習得』の方法について聞く

「紙は行き渡ったか? 手元に紙が無い生徒は挙手……手を挙げて知らせて欲しい」


ホーランド先生はそう言いながら、教室内を見渡す。


「皆に紙は行き渡ったようだな。では説明を始めます。この紙は『カレンダー』です。『カレンダー』というのは月と日にちを記載した物です。理解できない場合は、寮に戻った時に世話係に聞いてください」


まさかの説明丸投げだった。

ホーランド先生は、やる気がない先生なの……?

ホーランド先生は話を続ける。


「この教室にいる『Ⅰー1 基礎クラス』の諸君は丸印がある日の一時限目、朝食を食べた後にこの教室に来てください。その際は寮の部屋にある教科書『ネルシアショキュウガクシュウキョウホン』とノート、そして筆記用具……でわからない者もいるか。ペンを持ってきてください。持っていない者は購買で購入してください」


私はノートもペンも持っているから、購買に行く必要はない。

お金がある家に転生できてよかった。


「ではこれから『スキル習得』の方法について教えます。きちんと聞かないと死ぬことになるかもしれないので、よく聞いてください。わからないことがあったら世話係に確認するように。自己判断……自分だけの考えで危ないことをして死んでも、学院側は責任を負いません」


えっ!? 『スキル習得』って死ぬ可能性があるの!?

私はホーランド先生の言葉に驚いて目を見開く。

私の世話係のクロエはそんなこと言ってなかったと思うんだけど!!

動揺した生徒たちがお喋りを始める。

ホーランド先生は教卓を叩いて口を開いた。


「静かに!! では説明を始めます。スキル習得のためには『どのようなスキルが欲しいか』ということを口に出すか、紙に書く必要があります」


私はホーランド先生の言葉を聞いて『井上愛子』だった時に家族で行った初詣を思い出した。

初詣に行った時、父親が『無事故であるように』というお参りをしたいというので、お坊さんに渡す紙に無事故祈願と書き、父親の氏名と住所、そして車のナンバープレートに記された番号を書いた。

なんでそんな面倒くさいことをしなければいけないのだろうと思ったのだけれど、広い畳の部屋に通され、足がしびれながら正座をして頭を下げながら、ひたすら何やら唱えているお坊さんのよくわからない言葉を延々と聞いていた。

そうしたら、お坊さんは私の父親の氏名と住所、ナンバープレートの番号を読み上げて無事故祈願をしていた。

話によると、住所や氏名を言うのは『神様に所在を知らせて守ってもらうため』らしい……。


『リア・クラーク』として転生したこの世界には、どうやら神様が実在しているようだ。

スキルボードに記されたスキル『異世界の記憶』の説明に『知識と探求の神バァンによって異世界から転生させられた者が持つ記憶』と記載されていた。

でも神様って、人の頭の中とか覗けて思っていることがわかるっぽいけど、この世界の神様はこっちから伝えないとダメなんだね。

プライバシー保護とか、神様の世界でも重視されてるの……?


「『自分がどのようなスキルを取得したいか』を神々に伝えることは重要です。ネルシア学院の図書室には『既存スキル一覧表』があるので……すでにわかっているスキルが全部書いてある本があるので、それでスキルの名前を調べて記載するとスキルを取得しやすいです」


私はホーランド先生の話を肯きながら聞く。

学院を案内された時に図書室前にも行った。

私がまず覚えたいのは『清潔』なので、それを今日の夜に覚えてから図書室に行ってみよう。


「ベッドなど、安全が確保できるところに横になります。口頭……言葉で伝えるか、紙で伝えたスキルを覚える資格があると判断された場合、ものすごく怠くなり、動けなくなり、気絶します。スキル取得に慣れた場合はこの症状は和らぐと言われていますが、初回スキル取得時は……初めてスキルを得る時には十分に注意してください。気絶して倒れて頭を打ち、死ぬ生徒が毎年必ず一人は出ます」


私はホーランド先生の言葉に震え上がった。

『井上愛子』だった時も、日本では、真夏に熱中症や川の事故、海の事故で亡くなる人が絶えなかったと思う。

注意を促しても、話を聞かずに軽く考え、好きなようにふるまう人は、どこの世界にも一定数いるらしい……。


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