第19話 リア・クラークは『スキルボード』の『異世界の記憶』をタップして表示されたスキル内容を確認する
入学式を終え、新入生は一列ずつ並んで講堂を出る。
そのままネルシア学院内を案内され、そして教室前の廊下に並ばされた。
ネルシア学院の廊下と教室は、井上愛子の記憶の中の中学校を少しだけ彷彿とさせる。
私を含めた新入生は一列に並ばされ、教員らしき男性は先頭にいる生徒の名前を確認して手にしている名簿と照らし合わせ、入る教室を指示している。
めちゃくちゃアナログ……。
『スキルボード』にメッセージを一斉送信とかできないの……?
ファンタジーな世界観の不便さに愕然としつつ、どうすることもできないので私はおとなしく列に並び、自分の順番を待った。
暇だから『スキルボード』を眺めていよう。
私は手に持っている『スキルケース』から『スキルボード』を取り出して眺めた。
私の『スキルボード』には 異世界の記憶 → 読書 という記載だけがある。
何度見ても、スキルが二個しか無い。
タップしたらスキルの意味とか表示されるかな?
私は『異世界の記憶』に触れた。
……表示、出たよ。
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スキル名 異世界の記憶
知識と探求の神バァンによって異世界から転生させられた者が持つ記憶
♦
知識と探求の神バァンって、誰……?
日本の神様には『知識と探求の神バァン』なんていなかったよね?
私『井上愛子』は読書はしてたけれど、歴史に詳しいわけじゃないし、神様に興味があるわけでもなかった。
この記載を信じるとしたら、私をこの世界に転生させたのは『知識と探求の神バァン』なの?
私が考え事をしているうちに列は進み、私が列の先頭になった。
名簿を手にした教員らしき男性が私に視線を向けて口を開く。
「名前は?」
「『リア・クラーク』です」
教員らしき男性は手にしていた名簿から私の名前を探し、見つけた様子で口を開いた。
「『リア・クラーク』さんは基礎クラスです。Ⅰー1というプレートがある教室に入って下さい。場所は一階の一番左端です」
「わかりました」
私は心の中で『Ⅰー1 基礎クラス』と繰り返しながら、廊下を歩き出した。
一階の一番左端の教室にたどり着き、プレートを見上げると『Ⅰー1』と記載してある。
ここが『基礎クラス』だ。
私は開いている扉から教室に入り、迷った末に廊下側の一番前の席に座る。
『リア・クラーク』は背が低いので、後ろの席に座ってしまってはいろいろ不都合がある気がする。
私は、一番後ろの列で埋もれていた方が気楽な気がするけれど……。
『Ⅰー1』の教室にいる人数はまばらで、空席が多くある。
これから、増えるのだろうか。
私は特にやることもないので再び自分の『スキルボード』に視線を向けた。
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