第17話 リア・クラークは現在の自分のスキルツリーを見て『スキルボード』と『スキルケース』には『不壊』の加護があると知る

隣の席に座っている少女の話では、捕縛された闖入者はネルシア学院の教師たちによって騎士団に引き渡されるようだ。

私は彼女の話を聞きながら、膝の上の箱の蓋を開けた。

箱の蓋の中には私の名前『リア・クラーク』と刻まれたガラスの板が入っていた。

これがスキルボード……?


私がガラスの板の板に触れると、表のような物が浮かび上がってきた。

私は性格診断を思い出す。

イエスとかノーとか、選択肢を選んでいく……チャートっていうの? そんな感じ。


「これがわたくしのスキルツリーなのね……っ」


私の隣に座っている紺色の髪と目の少女が感極まったように言う。


「スキルツリー」


私は小さな声で呟き、ガラスの板を見た。

私のガラスの板には 異世界の記憶 → 読書 という記載だけがある。

現状、私のスキル少なすぎない? それとも皆、こんな物なの……?

そしてこの記述は『井上愛子』極振りという感じだ。

『リア・クラーク』のスキルはどこに行ったの……?


ネルシア学院の学院長は、まだ膝の上の箱を開けていない生徒に、箱を開けるように促し、言葉を続ける。


「『スキルボード』は名前を刻まれた本人にしか、内容がわからない仕様になっている。隣の生徒の『スキルボード』を覗き込んでも何も見えない。各自『スキルボード』に触れて、現時点の自分のスキルを確認するように。でも、自分のスキルはなるべく周囲に言いふらさない方がいいよ。自慢したいという子は、止めないけどね」


学院長の話を聞いた私は、自分のスキル……特に『異世界の記憶』というスキルについては黙っていようと思った。


「『スキルボード』と『スキルケース』には『不壊』の加護があって、スキルボードの所持者が生存している限り壊れることはない。なくしたり盗まれたりした場合は『スキルボード召喚』『スキルケース召喚』と唱えると……」


学院長の目の前に『スキルボード』と『スキルケース』は現れ、浮遊している。

彼は杖をステージの上に置き、浮遊している『スキルボード』と『スキルケース』を手に取った。

便利……!!

全部のアイテムに『不壊』の加護があって、召喚って言えば手元に戻ってきたらいいのにな。


「スキルツリーは、君たちの願い、祈り、意志で新たなスキルを刻み、そしてスキル同士が作用して新たなスキルが生まれる。自分らしく、人生を切り開くことができるスキルツリーを育てていってほしい。諸君の健闘を祈る。これにて入学式を終了する。一列ずつ講堂を出て、学院内を見回った後、担当教師にスキル取得と学科履修の説明を聞くように」


学院長はそう言ってステージ脇に去って行った。

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