第16話 リア・クラークはネルシア学院の入学式で『スキルケース』を取得し、不正入学者が捕縛されるのを目撃する

ネルシア学院の講堂で入学式開始を待っているうちに寝落ちした私は、紺色の髪と目の少女に身体を揺り起こされて目覚め、だが、すごく眠くてまた寝てしまう。


「まあ、まだ起きないの? 校長先生がいらしたわよ」


「ん……」


眠い、眠すぎる。

でも、入学式で爆睡したら、最悪、講堂に置いて行かれてしまうかもしれない。

気合だ、根性だ。私は自分の左手の甲を右手でつねってなんとか眠気を追い払おうと試みた。

私が必死で眠気と戦っていると、白いローブを着て、魔法使いの杖っぽい物を持った白髪の老人が講堂のステージに上がった。

誰……?


講堂のステージに上がった白髪の老人は手にしている杖を振り上げて口を開いた。


「新入生の諸君。ネルシア学院へようこそ。私はネルシア学院の当代の学院長を任じられた、オズモンド・フィシャーである。これから、入学試験を突破し、見事、ネルシア学院の門をくぐった諸君らに『スキルボード』を与える。条件指定『講堂内にいるネルシア学院の新入生』魔法発動『スキルボード授与』!!」


ネルシア学院の学院長を任じられたというオズモンド・フィシャーが手にしている杖を振り上げると、杖の上部に埋め込まれた宝石がまばゆい光を放つ。

眩しい……っ。

眠気も吹き飛ぶ眩しさに私は思わず目をつぶり、これで視力低下とかしないかすごく心配になった。

金星を直で見ると視力が落ちるとか、井上愛子が小学生の時にそんなことがあったような気がする。


光がおさまると、私の膝の上には藍色の布張りの箱が置かれていた。

これ何……?


「ああ。これがわたくしの『スキルケース』なのね……っ」


私に声を掛けてくれた紺色の髪と目の少女が彼女の膝の上の藍色の布張りの箱を見つめて呟く。

これがスキルボードが入っている箱……?


「ネルシア学院、新入生の諸君。『スキルボード』が入った『スキルケース』は行き渡ったかね?」


ステージの上に立つネルシア学院の学院長がそう言うと、最前列の右から2番目の席に座っていた大柄の男が勢いよく立ち上がった。


「オレのところには『スキルケース』ってやつがきてねえぞ!!」


「そうか。条件指定『ネルシア学院に在籍する資格の無い者』魔法発動『捕縛』!!」


学院長の呪文詠唱に青ざめた男が講堂内から逃げ出そうとしたが、学院長の杖から伸びた幾筋もの光の縄が男を捕縛した。

光の縄に捕縛された男は青虫のように床に転がる。

どうやらこの男は不正入学者らしい。

どうやって『白の小館』の『真偽の月水晶』の本人確認をくぐり抜けたのだろう?

それにネルシア学院の制服はどうやって手に入れたのだろう?


「お姉さまの入学式にも、入学資格がない不逞の輩が入学式に紛れ込んでいたそうです。いつの時代も、あの青虫のように転がっている男のように悪知恵を働かせる者がいるのね」


私の隣に座っている紺色の髪と目の少女が、顔に嫌悪感を滲ませ、吐き捨てるように言った。

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