第3話 アンタークティカ・ウォー
アンタークティカ・ウォー。
南極大陸争奪戦争。
世界最終戦争。
第4次世界大戦。
ハルマゲドン。
さまざまな名前で呼ばれるが、要するに勃発したら人類を含めて地球上の生物の大部分が絶滅すると考えられていた戦争だ。
人口危機。
食糧危機。
水危機。
燃料危機。
気候危機。
砂危機。
大気危機。
プラスチック危機。
宇宙開発危機。
たくさんの破局的な危機で人類はいきづまっていた。
南極を開発しないと生存できないところまで来てしまった。
しかし南極の氷と自然を破壊することで、危機はさらに拡大した。土地の奪い合いも起きた。
最終戦争が不可避な状況に突き進んだ。
どこの国が発射したのかわからない核ミサイルが、超大国の領土に着弾した。
僕が知っているのはそこまでだ。
急ピッチで建設されたトキオシェルター、オーサカシェルター。
収容人数は合わせてわずか3500人。
誰が入るのかをめぐって内乱が起こったが、政治と軍事を支配していた上流階級の人間たちが力で押し切って、収容者を選抜した。
僕はただの庶民だった。やけっぱちな気分で人類の滅亡をこの目で見届けて死のうと思っていたけれど、なぜか誘拐されて、トキオシェルターに運ばれてきたのだ。
「あ……たしが……ハルくんを……たすけた……のよ……。愛してる……」
ネネは悪魔のような微笑みをたたえた魅力的な容貌を僕に向けた。
別に助けてなんて頼んでいない。
他の大多数の人と同じように戦死してかまわなかった。
「あの女……あれは入れたく……なかったけれど……あの家にも……力があった……」
エリも特別な階級に属していた。
僕は高校入学直後にネネから熱烈に求愛されて、つきあった。
なんで僕なんかを気に入ったのかわからない。
「ハルくんには絶妙なフェロモンがあるの。一緒にいたい。浮気はだめ。束縛するよ。ふたりでみんなを支配しよう。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。好き好き好き好き大好き」
僕はネネに合わせることはできなかった。
やさしくおっとりしたエリと出会い、ネネから逃げた。
元カノはまともではなかった。僕の新しい恋人を背後からナイフで刺した。
エリは一命をとりとめた。
ネネが収監されて、僕はほっとした。
トキオシェルターに入るまでのつかのまの間、僕はエリとしあわせな時間を過ごした。
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