番外編 金谷千歳と、好きな人への贈り物

 朝飯の席で、和泉が味噌汁をすすってから言った。


「今週、ボーナス出るんだ」

『おっおめでとう、貯金するのか?』


 こいつ、散財とは無縁だからな。


「まあ基本は……でも、少しは何かに使いたい気持ちもある」


 まあ、懐あったかいと余計なもの買いがちだよな。


『じゃあさ、お前の好きな人に何かプレゼントして気を引けよ、もうすぐクリスマスだし』

「えっそう来るの!?」


 和泉は目を丸くした。


『いいだろ? お前好きな人にどんな家で暮らしたいかくらい聞けるんだし、欲しいものくらい聞き出せるだろ?』

「えっ、ええー……」


 和泉は困ったように視線を彷徨わせる。


『できないのか?』

「えっ、えっとその、それはやるけど、それはそれとして、千歳なにか欲しいものある?」

『ワシ?』


 なんでワシ?


「その、日頃のお礼と言うことで」


 ふーん、まあ悪い気はしないな。


『じゃあ、クリスマスプレゼントに何かもらおうかな』

「うん、欲しいものあるなら買うし、なんか気の利いたもの選べって言うなら俺がんばるし」

『んー……欲しいのは……そうだなあ、シュトーレンと加湿器なんだけど、どっちにしようかなあ』


 シュトーレンは自分で買おうかと思ってたけど、くれるって言うなら欲しい……でも、最近加湿器欲しくなってきたし。

 和泉はあっさり言った。


「両方買うよ、どんなのがいい?」

『どっちか1個でいいって』

「じゃあ、より値段が高い方買ったげる」

『うーん、どっちが高いかわからん』


 加湿器っていくらするんだ?


「ていうか、なんで加湿器欲しいの?」

『そりゃ乾燥するし……タオル濡らして部屋に干してしのいでたけど、やっぱちゃんとしたの欲しいなって』


 洗濯物も部屋に干したりしてたけど、毎日洗濯するわけでもないしな。

 和泉は考える顔になった。


「うーん、それなら加湿器は普通に生活に必要だよねえ……じゃあシュトーレンはプレゼントで、加湿器は普通に必要なものとして買うよ」

『いいのか?』

「大丈夫、これでも人並み程度にはお給料もらってるんだよ」


 和泉は、ワシを安心させるみたいに笑った。


「どの加湿器とシュトーレンが欲しいとかある?」

『うーん、加湿器は手入れが楽なやつ、シュトーレンはうまいやつ』

「了解」


 やった!

 そう言えば、和泉が好きな人に何買うのかは全然わかんなかった。それわかったら、和泉の好きな人がどんな人かわかるかもしれなかったのに。

 和泉は、好きな人に何選ぶのかな? 和泉の好きな人が欲しいものは、何なんだろうな?

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