番外編 金谷千歳の確認

 コピーしてもらった契約書。家に帰ってから、和泉はいろいろ調べながら読んでたけど、「おかしいところはなさそう」だって。


『お前が見て大丈夫なら、絶対大丈夫だろ』

「俺ばっかに頼らない! 千歳もちゃんと読みな」

『はーい』


 ワシは渋々ながら読んで、難しかったけど変なところはないと思った。

 夕飯の席で『契約書、変なところはなかったと思う』と言ったら、和泉は頷いた。


「俺も大丈夫だと思う……でも、火災保険とか地震保険には入っといたほうがいいと思う」

『建つ前から?』

「まあ、買ってから。ローンで買う人は保険も同時にかけてその分も払うんだけど、現金一括だと保険は自分で入らなきゃいけないんだって」

『へえー』


 いろいろ調べてくれたんだなあ、やっぱり和泉に読んでもらってよかった。


「まあ、不動産屋に聞いて、ローンで使ってる保険に入るとかで大丈夫だと思うけど」

『いくらくらいなんだろ』

「どこの保険かにもよるけど、相場としては5年一括で払って5万から10万ってところ」

『まあ払えるな』

「で、その、保険料は俺が払おうかなって思ってたんだけど」

『え、そうなのか?』

「それくらいなら払えるしさ、千歳に何もかも出してもらうのは悪いし」


 和泉はけんちん汁をすすった。


『うーん、払いたいならいいけど』


 こいつ、本当に真面目というか、責任感が強いというか……。まあ、そこがいいところではあるんだけど。


「それと、毎月家代として千歳に払うお金、とりあえず8万にさせてくれないかな?」

『え、今の家賃よりずいぶん高くないか?』


 今の家賃、3万ちょいじゃなかったっけ?


「千歳を金谷さんちに仲介するお金ってことで、毎月俺に5万入ってるだろ? 貯金に回してたけど、それ使う。あと家賃に使ってたお金いくらか足して8万」

『いいよ、家賃代だけにしとけよ』

「でも、俺が払うもの払わないと共同名義にできないよ?」

『それはそうだけどさ』

「だから8万。ただ、俺がもし何かあって収入面に困ることがあったら、また金額は相談させて欲しい」

『うーん、そんならまあ、いい』


 ワシはその時、ふと思いついたことがあって言った。


『そんならさあ、お前もう一つ口座作ってさ、家買ったらそこに毎月8万振り込んでほしい』

「ん? どういうこと?」

『ある程度金が貯まったら、それワシがもらって、家をお前と共有名義にする。で、もしお前が金に困った時は、まずその口座の金を使う』

「積立貯金も兼ねるの?」

『うん。お前が金に困ったときも、まずお前の金で何とかできるから、いい案だろ?』

「なるほど……そうだね。共有名義にするにも、千歳にお金払った証明いるだろうし、ある程度のお金ないとダメだろうし……」


 和泉は、納得したように頷いた。


『じゃ、それで決まりな』


 割といい提案ができたし、和泉はワシだけに金を出させないためにすごく気を使ってくれたし、ワシはなんだか嬉しかった。

 そうなんだ、和泉はすごくいい奴なんだ。和泉の好きな人はその事知ってるのかなあ、知ってたら、こんないい奴ほっとかないでほしいんだけどなあ。

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