番外編 金谷千歳とこたつ記事

 いい天気だったから、こたつ布団を干してこたつを用意した。


『ほれこたつだぞ、今年もこっちで仕事するか?』


 とりあえず、和泉に声をかけておく。


「あっする、そうだねもう朝晩冷えるもんね」

『うん、夜冷えるから夕飯はおでんだ』

「よっしゃ!」


 話す間に、和泉はノートパソコンやモニタを移動してきて、仕事場をこたつにしつらえた。


「こたつはいい……たとえこたつ記事と言われようとこたつで書いてしまう……」


 和泉は満足げにこたつに入った。


『こたつ記事? お前、今こたつの記事でも書いてるのか?』

「ああいや、こたつ記事とかこたつ記事ライターって言う蔑称があるんだよ。こたつから動かないで、適当にネットのことをつぎはぎで書いたような記事のことをそう言うんだ」

『え、でもお前ちゃんと仕事してるじゃないか』

「そりゃ、クライアントに聞き取りしてニーズ想定してキーワード決めて資料噛み砕いて本調べて論文調べて、頑張ってるつもりだけど、ジャーナリスト並みに足使ってる人からしたらこたつ記事って言いたくなるだろうなというのもわかる」


 和泉は苦笑した。


『そっかあ……あれ、でもお前最近ちょくちょく外仕事してないか?』

「まあ体調に問題なくなったし、インタビュー記事の経験積んでくれって言われてるし、聞き取りを対面でやってくれってクライアントも増えたし」

『じゃあこたつ記事じゃないじゃないか』

「でもこたつで書いてると、ちょっとだけ罪悪感がある」

『あんま気にすんなよ』


 ワシはおでんの面倒を見に台所に行った。朝飯のあと作って煮て保温鍋に入れてあるんだけど、夜に備えてもう一回煮立たせてまた保温鍋に入れときたいんだ。


『夜のおでん、大根いっぱい入れてあるぞ、味しみしみにするぞ』

「やった!」


 和泉は嬉しそうに笑った。こいつ本当に出汁の染みた野菜が好きだな。おでんはたねと大根さえあれば保温鍋任せにできるし、この冬はちょくちょく作るか。

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