番外編 金谷千歳のひらめき
和泉とおやつを食べていた時、ワシは唐突に気づいた。ワシが大人にならないと和泉の好きな人はわからないけど、別に和泉の好きな人を知らなくても、和泉に告白しろとか惚れさせろとか発破をかけることはできるんじゃないか?
『おい、お前、好きな人教えなくていいからその人誘って遊びにでも行け』
和泉は、カボチャ蒸しパンを頬張りかけて戸惑った。
「え、何、いきなり」
『ワシに好きな人教えなくても、お前は好きな人に会えるんだろうが! 一緒に遊びに行け! ガンガン押せ! 相手がお前で色恋に目覚めるようにしろ!』
「そ、それはまあ理屈的にはそうなんだけど……無茶をおっしゃる……」
『なんで無茶なんだ、そんなに高嶺の花なのか』
「…………」
和泉は、何故かワシをじっと見た。
『なんだ』
「いや……ええと、そうだな。次の休みに服でも買おうかな、似合うやつ探して。この冬ボーナスもらえるしさ」
『おっ、おしゃれになる作戦か。いいぞ』
そっか、和泉が見た目もいい男になれば、和泉の好きな人も和泉をいい男と思ってくれるかもしれない。
和泉は照れたように笑った。
「今まで、服なんてみっともなくなければいいと思ってたけどさ。自分に似合うやつっていうのは咲さんに言われるまで思いつかなかったから、駅ビルのある方の駅でちょっといい服屋探して、店員さんに相談して見繕ってもらおうかな」
『よし!』
なんだ、けっこう前向きじゃないか! もっと早くこうすればよかった!
和泉はワシに言った。
「そんでさ、服買う時千歳の意見も欲しいからさ、ご飯おごるから付いてきてよ」
『ワシの意見?』
「その、普段一緒にいる人の視点も欲しくて」
『よし、行ってやる』
よしよし、好きな人が誰か問い詰めなければけっこう動いてくれるんだな! これからもちょくちょくこうしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます