よい付き合いを保ちたい

 狭山さんと金谷さんが、近所のマンションに引っ越してきて、蕎麦を持って挨拶しに来てくれた。


『わー! いい蕎麦! ありがとう!』


 俺は狭山さんに話しかけた。


「ありがとうございます、昨日は大変だったみたいですね」


 狭山さんは苦笑した。


「大変でしたね……今日も獣医さんで見てもらったりしてて」

『ん? なんかあったのか?』

「クーちゃんがさ、子猫拾ってきたんだって」


 俺は千歳に説明した。昨日、狭山さんがDiscordで「クーが逃げて見つけたけど子猫拾ってきた!」と騒いでたのだ。

 千歳は目を丸くした。


『子猫!?』


 狭山さんがくわしく説明してくれた。


「クー、引っ越しのドサクサで外に出ちゃって、割とすぐ見つけたんですけど子猫くわえて帰ってきたんですよ」

『マジかあ』

「今日子猫の検査してもらって、特に病気はなかったんですけどノミがひどくて、寄生虫もいたし、獣医さんで駆虫薬とかもらってきたりして」


 金谷さんがうっとりした顔になった。


「ちっちゃくてもさもさで、すっごくかわいいんですよ……」

「マンションの規約的には大丈夫なんで、まあうちで飼うことになるかなと」

『どんな子猫なんだ?』

「こんなです」


 金谷さんがスマホを出して千歳に見せた。画面の中では、ふわふわの黒い子猫が純真な目でこちらを見つめていた。


『うわっかわいい! えっなんでこんなもさもさなんだ!?』


 狭山さんが言った。


「たぶん長毛の子猫なんですよね。大きくなったらもっともさもさになると思います」

『へええ……』


 クーちゃんと同じ黒猫なんだな。


「この子も黒猫なんですね」


 俺がそう言うと、狭山さんは笑った。


「ははは、期せずして黒猫二匹です」

『なあなあ、そっちの家片付いたら子猫見に行ってもいいか?』


 金谷さんが「いいですよ」といい、少し考えてからまた言った。


「なんなら今見に来ます? 片付いてなくて、あんまりおもてなしはできないですけど」

『えっいいのか? 行く!』


 千歳は飛び上がる勢いで喜び、帰る金谷さんと狭山さんたちについて行ってしまった。俺はもらった蕎麦を台所に置いて、仕事に戻った。

 戸籍上のこととは言え、千歳は金谷さんときょうだいだし、仲良く交流できてるのはいいことだな。

 俺は一人っ子で、兄弟がいる感覚はいまいちわかんないけど、親類縁者とはトラブルなく生活できるほうがいいのは親のことで身に沁みてる。近所付き合いも良好なほうがいいから、千歳と金谷さんが普通に仲いいのは、本当によかった。



―――――――――――――――

※クー視点の話

ttps://novelup.plus/story/949253978/229336454

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