がんばることを掘り下げたい
駅ビルでやってる期日前投票に和泉と行って、頑張って調べて選んだところに入れた。でも、大人をやってる感じにならない。大人になるってどういうことなのか、ピンとこない。どうすれば大人なんだろう?
和泉がお昼奢ってくれるっていうから、またサイゼリアに行って、飯を食ってる時に和泉に聞いてみた。
『あのさあ、ワシ投票してみたけど、大人になるってよくわからん。どうしたら大人だ?』
「うーん……そりゃ難しいねえ」
和泉は苦笑した。
「千歳は素直なのがいいところなんだけど
、ちょっと素直すぎるところが危ういと言うか……たん……いやその」
『単純か、ワシ?』
「言葉を選ぼうとしたのに」
和泉はまた苦笑いし、ミラノ風ドリアを一口食べ、少ししてから言った。
「もう少し深く考えて、熟慮を覚えたらもっと大人になれると思うよ。でも経験を積めばできるようになるよ、千歳は自分の詳しいことについては、深く考えたり気遣いしたりできるしさ」
『そうか?』
「心霊業界のこととか、女の人の困り事とか、千歳のほうが詳しいじゃん、で、そういうことについては千歳は俺以上に対応できてるじゃん」
『うーん、そうかも』
ワシはイタリアンハンバーグをほおばった。
「家事能力はすごく高いし、スケジュール守って仕事するとかもちゃんとしてるしね。そういうところはもう大人だよ」
『え、そうか?』
褒められると嬉しい。そっか、そういうところはちゃんとできてるんだ!
「だから、いろいろ学んで、いろいろ考えるのが大事としか言えないかな。まあ時間はかかるけどさ」
『むー』
そっかあ、一朝一夕とは行かないか。
「千歳はさ、昭和の頃の人の知識は割とあるだろ? 中学とか高校の知識はある?」
『えーと、倉沢静が高校まで行ってるから、学校で勉強する内容はわかる』
倉沢静。ワシが威圧的な格好になりたい時に見た目を借りる奴。あいつ、人を殴る才能しかなかったからヤクザの用心棒に流れ着いただけで、勉強は真面目にしてたんだよな。
「じゃあベースはあるわけだから、それを令和版に更新していくのを考えるといいと思うよ」
『それはお前がわりとやってくれてないか?』
ワシは首を傾げた。
「まあ努力はしてるけど、千歳自身も心がけることで違うものはあるだろ」
『そうかも』
ワシは頷いた。じゃあ、物事を深く考えるのと、熟慮と、令和についていくことをとりあえずがんばればいいわけか。
術式に念込めなきゃいけないし、毎日の家事もあるし、がんばらなきゃいけないことたくさんあるなあ。でもワシ元気モリモリなのが取り柄みたいなもんだし、少しずつがんばろう!
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