会社の集まり楽しみたい

 グリーンライト社員の顔合わせ兼嬉野さんの歓迎会の日が決まった。なんと、みんなで東京に集まり、イタリアンフルコースを食べるということだ。なんか俺の歓迎も兼ねるので、俺は参加費タダらしい。

 千歳(朝霧の忌み子の姿)にそれを伝えると、うらやましがられた。


『いいなあ、うまいもん食えて』

「お土産買って帰るよ」


 俺だけおいしいもの食べて帰るのは悪い気がするし。都会まで出るんだし、何かおいしいお菓子でも探そう。

 会社の飲み会が食事メインなのは、アルコールあんまり飲めない人間でも楽しめてありがたい。そういう配慮をしてくれる会社でよかったな。

 そんなことをしみじみ思っていると、千歳が言った。


『あっえっとその、ワシもその日出かける』

「あっそうなの、どこ?」

『えっと、夜の映画ハシゴしたくて……もしかしたらお前より帰り遅くなるかも』

「あ、じゃあ前行った映画館?」


 前、俺が富貴さんと会った時に千歳が行った映画館かな?


『そ、そうそう』

「うーん、その姿であんまり夜遅くまで街中にいるのはどうかと……」


 中学生くらいの女の子、いや本当は女の子ではない部分が一部あるけども、それくらいの子が夜中に出歩いてるのは心配だ。

 けれど、千歳は『大丈夫だ』と言った。


『姿は適当に変える。他の格好もけっこう楽にできるようになってきたし』

「あ、じゃあ成長痛だいぶマシになってきた?」

『そうだな、家にいる時はこの格好かお化けの格好が楽だけどさ』

「そっか、じゃあ心配ないね」


 千歳は、筋骨たくましい男性の姿にもなれるわけなので。その姿なら変なことされる心配ないな。

 俺はこの時、千歳が嬉野さんについて騒がないことに気づかなかったし、千歳が何を企んでいるかも全く気づかなかった。

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