優先順位がわからない

 夜のまったりタイム。咲さんとLINEして、次に会う喫茶店を相談している。なるべく相手の好みに合わせたいので、好きなものを聞いている。


「甘いものとかお好きですか?」

「好きです! コーヒーも紅茶も飲める所がいいな」

「じゃあ、そういうところで、そちらからも行きやすいところを探しますね」


 咲さんの家は川崎の近くだから、川崎から行きやすいところ……うーん、お店の多さを考えると、横浜かみなとみらいが無難なのかなあ?

 その辺の店を調べていると、なぜかサーティーワンの広告が目に入った。そう言えば、ここチョコミントアイスあるけど、千歳は行ったことないんだよな。でも遠くにしかないし……え、近くの駅に新しく出来たの!? ここに千歳をチョコミントアイス食べに連れてったら、千歳大喜びじゃん! 千歳と一緒に行きたいな、俺もたまにはアイス食べたいし……。

 ……いやいや、先に咲さんと話す店決めなきゃだよ。先にそっちだよ。

 咲さんは明るくて元気で、俺はそういう人が好き。女装させられるのは勘弁だけど、最初に一番言いにくいことを開示してくれたことは、むしろ誠実だと感じている。

 だから別に、付き合うことに関して困難は感じてないんだけど……。

 なんだろうな、千歳と遊び歩くことを考えたときの方が、心が沸き立ってしまった。

 よくないなあ。うーん、もっと咲さんと距離が近くなれば、咲さんと遊び歩くことを考えただけで楽しくなるかな?

 まあ、咲さんは土曜の午後会いたいそうだから、日曜に千歳をサーティーワンに誘おう。咲さんとの話がもしダメになっても、翌日に千歳がチョコミントで喜ぶ顔を見れるんだったら、俺は多分大丈夫だと思う。

 俺は、テーブルの正面で組紐を作っている千歳に声をかけた。


「あのさ千歳、駅ビルある方の駅にサーティーワンって言うアイス専門店ができたんだけど、そこチョコミントアイスの元祖なんだ」

『え!?』


 予想通り、千歳は驚いた。


「で、今キャンペーンやってて、いろんなアイスの盛り合わせが少し安く食べられるんだ」

『ええ!?』


 千歳はまた驚いたが、甘いものにしっかり興味を惹かれた顔をしている。


「でさ、俺もそこで食べたいフレーバーのアイスあるからさ、日曜に一緒に行かない?」

『行く! 絶対行く!』


 千歳は、飛び上がる勢いで喜んでくれた。

 それから千歳は『お前さ、今度誕生日だろ、ついでに駅前でなんか好きなもの買ってやる』と言った。


「え、ありがとう……うれしい……」

『何が欲しい?』

「えーと、そうだな……あ、夏の散歩の時の日除け用に帽子欲しい」

『おう、じゃ、似合うの探してやる』


 千歳は笑った。

 よし、これで日曜は千歳と遊べる。それを楽しみに、今週の仕事頑張って片付けよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る