でっかい買い物しに行きたい

お昼のサンドイッチを頬張りながら、千歳が『なあ』と言った。

『前にさ、お前が体治った時さ、三つ頼み聞いてくれるって言っただろ?』

「うん」

俺はうなずいた。

『残り一個あるだろ?』

そう言えばそうだな、三つ目のお願いを聞いた覚えがない。

「うん、お願い決まったの?」

そう聞くと、千歳はなぜかもじもじした。

『……ワシも使うから、半分出すけどな、その……』

ん? 大きい買い物なのかな?

千歳はもじもじしながら言った。

『……今よりでかい冷蔵庫がほしい』

「冷蔵庫?」

え、昨日の寝言は欲しいもののことだったの!?

千歳はなにか言い訳するように早口で説明した。

『あのな、組紐作るのにやっぱ時間いるから、もうちょっと食べ物の買いだめと料理の作りだめしたいんだ、でもそれには今の冷蔵庫小さいんだ、いつもぎゅうぎゅうなんだ』

ま、真っ当な理由!

「ごめん、千歳大変だったんだ、じゃ買おう、大きいの買おう、ていうかさ、普通に必要なものだからお願い使わなくていいよ、普通にお金出しあって買おう!」

俺はものすごく千歳に申し訳なくなった。夢に見るくらい欲しかったのか、そりゃ千歳だって仕事あるんだしな、家事ばっかりやらせてごめん、いろいろ工夫しないといけないよな、ていうか一人暮らし用の冷蔵庫だもん、二人じゃ容量足りないくて当たり前だよ!

千歳はまだもじもじしている。

『うん、でもさ、結構値段する買い物だしさ』

「そりゃハイテクなのは高いけど、探せばお手頃価格なのはあるよ。Amazonとかヨドバシとか調べとく」

そう言うと、千歳は少し困った顔になった。

『うん、値段は通販で調べられるけどさ、ワシ、電気屋で現物見比べて買いたい』

「あー、それもそうだね」

主に使うのは千歳なわけだしな。

「えーと、駅ビルある方の駅に、確かヤマダ電機あるんだけど、そこに見に行く?」

『うーん、お前調べるの得意だからさ、インターネットである程度冷蔵庫の相場調べてから着いてきてほしい』

「明後日の午後なら空けられるけど、それでいい?」

『頼む』

というわけで、千歳とでっかい冷蔵庫を買いに行くことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る