閑話 怨霊の昼寝

俺の膝の上で爆睡する千歳(幼児のすがた)を抱えて仕事している。この所、千歳は根を詰めて組紐を作っていて、完成した組紐を今日の午前中に緑さんに組紐を渡しに行った。今月の組紐ノルマが済んだことで、千歳は気が抜けたみたいだ。お昼の後、座椅子で仕事してる俺の膝に『座らせろ』とやってきて、俺の腹に背中を預けて、そのうち眠り込んでしまった。

俺にできることは、千歳のよき座椅子となることで、仕事に集中していれば、よき座椅子業は達成できる。

俺はしばらく静かにキーボードを打っていた。仕事が一段落したら散歩行きたいなと思ってたけど、千歳を起こしたくないし、雨だし、やめとこうか。

三時頃に仕事が一段落ついた。千歳はまだぐっすり寝ている。

俺は、千歳を起こさないように気をつけながら、千歳の顔を覗き込んだ。安心しきって寝てるなあ、口半開きだ。

……千歳は俺にくっついて寝たがる。子供らしいスキンシップを求めてのことだから、いつか、もう十分ってなったら、一人で寝るようになるだろう。

俺は、千歳がくっつきたいならいくらでもくっついていいよ、という立場だ。俺から千歳にくっつきに行ったことはない。

でも、千歳にくっつかれるの、俺は少しずつ嬉しくなってきている。

千歳が精神的に大人になって、俺にくっついてこなくなったら。俺は多分、かなり寂しいだろうな……。

いや、でも、千歳が精神的に大人になって、もう十分と思って俺にくっついてこなくなるのは、好ましい変化だからな。

いわゆる、卒業だ。寂しくても、よかったと思わなくちゃいけないんだ。

……まあ、こんなにべったりひっついて寝てるようじゃ、卒業はだいぶ先だろうけど。

そんな事を考えていると、千歳は、眠りながら『ふふ……』と笑った。

『でっかい……冷蔵庫……でっかい……ふふ……』

……どういう夢を見てるんだろう?

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