落ち着くところに落ち着きたい
事の経緯を知った鹿沼さんはものすごく慌て、俺にものすごく謝ってきたが、謝るのは俺の方だった。俺の情報伝達がしっかりしてなかったのが全てまずかったんだよ!
「俺が謝んなきゃいけないんだ、本当にごめんね、俺がしっかりしてなかった。鹿沼さんにはなんにも責任ないから」
「でもごめんなさい」
「本当に大丈夫だから。もし困ったことがあったら俺にすぐ連絡して」
千歳には、食事のときにヤバい予感がするということを話していた。千歳は食器洗いサボって冷汗かいてLINEしてる俺を見て、俺の予感があたったらしいことを知ったようだった。
『大丈夫じゃなかったみたいだな、どうしよう』
「いや、全部俺が悪い……いや、佐和さんもちょっとどうかと思うけど……」
知りたい気持ちはわかるけどさあ。
打つべき手はちゃんと打っておこうと思って、俺は佐和さんに「鹿沼さんから何があったか聞きました、私も狭山さんも朝日さんのアカウントを教えなかったことは朝日さんにどうか伝えてください」とLINEした。
すぐ返事が来て「その部分については本人によくよく言い聞かせてあります。本人に、誰が主人なのかよく言い聞かせましたので、もう大丈夫です」と言われた。
いや、言い聞かせて大丈夫になるもんなのか? ていうか、何が大丈夫なんだ? 主人って何
?
「ねえ千歳、なんか謎の返事が来たよお……」
千歳に佐和さんの返事を見せると、千歳はうなった。
『まあ、朝日さんはもう尻に敷かれるの確定ではあるけどさ』
「それは俺も何となくそう思うけど……」
あれだけやらかしたあとだしなあ。
でも、他人に主人が誰か宣言するの、何かのプレイみたいだな、と思って、俺はハッとした。
あわてて裏垢メス男子のアカウントを開く。最新ツイートは、狐耳と黒マスクをつけたロリータ服の朝日さんの写真で、こういう文が添えられていた。
「ご主人様が出来ました。ご主人様は僕が苦しいのは長男だからでなくて長子だからだと教えてくれました。苦しい重荷を持つのを手伝ってくれると言ってくれました。かわいがってほしいなら一番にかわいがってあげると言ってくれました。ご主人様は狐に好かれるので、僕も狐の耳をつけました。今、とても幸せです」
俺は、裏で何が起きたかを察した。
「……心配しなくても大丈夫そう……」
千歳に裏垢メス男子の最新ツイートを見せたら、大爆笑していた。
『も、もうそういう変態なプレイだろ、これ!』
「人を巻き込まないでほしいよねえ……」
俺はため息を付いた。
まあ、とりあえず、元の形に落ち着いたのか。狭山さんは金谷さんと、佐和さんは朝日さんと、俺は千歳と。
……いや、まあ、俺は千歳とは夫婦でも恋人でもなんでもないんだけど、千歳にずっと俺のところで落ち着いてほしい気持ちは、本当だ。
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