がんばれることはがんばりたい
夕飯もお風呂も済んだ、夜のまったりタイム。俺はこたつ座椅子に腰を落ち着けて、スマホで狭山さんのdiscord〈茶の間大海〉やSNSを巡回し、千歳(幼児のすがた)は俺の膝に乗って組紐づくりに勤しんでいる。
千歳が俺の方を振り返った。
『なあ、今日の夕飯のトマたまスープ、Misskeyにも写真のせたからさ、お前、あの黄色い猫の、キラキラした目のリアクションつけろ』
SNSの反応ねだる怨霊is何。まあ、承認欲求としてはかわいいもんだけど。
「blobcatだっけ? 好きだねえ」
『だってかわいいし、いろんなのがたくさんいるし』
「ちょっと待ってね……うん、よし、今つけたよ」
『よっしゃ、後で見よ』
千歳は俺の膝に座り直した。
俺は、自分のことを本当に単純だと思うんだけど、千歳がずっと一緒にいてくれると言ってくれてから、ずっと胸の奥がほのかに温かい。このほわほわした気持ちは、これは、幸せってことなんだろうな。
世の中何があるかわかんないけど、俺は千歳と一緒にいることを一番に考えて生きるから、どうか千歳が俺のところにずっといてくれますように。
いや、世の中何が起こるかわかんないから、千歳がよそに移らなきゃいけないこともあるかもしれないけど、そしたら、俺が千歳についていかせてもらおう。俺はネットとパソコンがあればなんとかなる仕事なんだから、移住には割と強いんだから。
そう、今のところ仕事には困ってないし、萌木さんや富貴さんや多田さんや狭山さんみたいな仕事相手にも恵まれてるし。着実に実績重ねて、もっといい条件の仕事に手が届くようにしよう。
がんばろう。俺、千歳がずっといてくれるなら、がんばれるから。
その時、スマホが震えた。通知は、狭山さんからのLINEだった。
「こんばんは。こないだの話ですけど、今度話聞いてもらえませんか?」
あ、そうだ、狭山さん凹んでたな。話聞いてあげなきゃ。こういう、親しい人の愚痴を聞いてあげるってことも、俺はちゃんとやれるようになりたい。
「私でよければ、いくらでも聞きますよ」
「じゃあ、すみません、僕の家に飲みに来ませんか? 飲み物も食べ物も、用意しますから」
と、唐突だな。飲みの席で聞いてほしいってこと? 宅飲みってことは、他の人に聞かれたくないのかな?
「いいんですか? またお邪魔しても」
「来てほしいです、引っ越したんで、前と別の住所ですけど」
そんな訳で、狭山さんの新住所を教わり、また狭山さんと飲むことになった。
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