番外編 怨霊千歳の楽観

祟ってる奴に「相談するのは俺やるから、千歳は普通にしてて」と言われたので、普段通り家事してる。祟ってる奴はスマホであちこちと連絡とってるらしくて、画面を見ながら険しい顔をしている。

昼飯と夕飯の仕込みをしつつ、テーブルでスマホいじってる祟ってる奴をうかがうと、画面をにらみ、難しい顔で画面に打ち込んで、また画面をにらみ、たまに大きくため息を付いたりしていた。

あーあ、こいつにこんな顔させるようなことになるなら、初詣なんて誘わなきゃよかった。せっかくこいつ、久々の休みだったのに。夕飯、こいつの好きそうなの作る予定なのに。ワシ、こいつの願い事知りたかっただけなんだから、もっと別の方法考えればよかった……。

しばらくして、祟ってる奴がスマホから顔をあげて、ワシの方を見た。

『ん? 相談、すんだか?』

「あ、うん……」

祟ってる奴は、あんまり元気のなさそうな顔で頷いた。

『うまく行ったか?』

「うん、関係各所で相談して、九さんをなだめるためにいろいろするって」

『そっか!』

ワシは、なら大丈夫だと思ったけど、祟ってる奴の顔がなかなか晴れない。

『そんな辛気臭い顔するな、ワシ神の使いでも絶対ぶっ飛ばしてやるから!』

ちょうど仕込みが一段落したので、ワシは手を洗って台所を離れて、祟ってる奴のところに行って、祟ってる奴の肩をバシバシ叩いた。

『せっかくの休みだし、今日の夕飯、お前の好きそうなの作ってやるから元気出せ! スパイスカレーに揚げない唐揚げ乗せてやるぞ!』

「…………」

祟ってる奴は、何故かワシをじっと見て、それからすごく辛そうな顔をした。

『え? どうしたんだ?』

相談、本当はうまく行かなかったのか?

「……千歳、お願いがある。真剣なお願いなんだけど」

祟ってる奴は、辛そうな苦しそうな顔のまま、そう言った。

『なんだ? さっきのこと、ワシ何かしたほうがいいのか?』

「……今、時間取れる? ちゃんと話したいんだ」

祟ってるやつの真剣な目がワシを見る。えーと、台所の生ものは全部冷蔵庫にしまったし、洗い物は多少あるけど水につけてあるから、洗うのは後で全然大丈夫だ。

『今大丈夫だぞ。話ってなんだ?』

「真剣な話だから、座って」

『うん』

ワシがテーブルにつくと、祟ってる奴は、絞り出すような声で言った。

「あのさ。俺、千歳に、これからは絶対に人を傷つけないって、真剣に約束してほしいんだ」

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