初詣にて頼みたい
仕事が詰まっているときこそ健康管理が大事なので、散歩はなるべくしている。暑くなってからは早朝の散歩だ。
近所で白いヤマユリが咲きはじめたので、祖母に送る用に写真に撮っていたら、千歳(女子中学生のすがた)が『なあ』と話しかけてきた。
『あのさあ、お前の仕事落ち着いたら、散歩で初詣行かないか?』
初詣?
「え? こんな季節に?」
俺はぽかんとした。
『今年初めて行くなら初詣だろ、いつ行っても』
「あ、それもそうか。でもこの辺、神社なんてあったっけ?」
『ワシがいた祠あるだろ? あの近くに、小さいのがあるはずだ』
千歳は祠がある方角を指さした。
「あー、あの辺なら、ちょっと足伸ばせば行けるか。でも、なんでいきなり初詣?」
なんか神頼みでもしなくちゃいけないことある? 俺が子供作るようにとか?
しかし千歳の返事は、予想外にまともなものだった。
『あのな、こないだ読んだインターネットの記事で、自分の願いとか目標をはっきりさせて、それに向かってがんばるには、初詣がすごくいいって言ってたんだ』
「へえー」
怨霊と暮らしてるくせにスピリチュアル的なことは全然信じてないが、確かに、お参りってのは自分の願いについて具体的に考えるいい機会だ。初詣なら、その年の目標を決めるのにもいい。まあ、もう八月だけど……。
俺の願い、ねえ。漠然と、千歳がずっといてくれたら、というのはあるけど。
考えとくか、自分の願い事。自分の目標。
「じゃ、今度行こうか。仕事、あと何日かで落ち着くからさ」
『早く結婚できて子供も作れますように、ってのもちゃんと祈っとけよ』
あ、やっぱそれも含むのな。
「はいはい、お願いしとく」
『気のない返事すんな!』
「はい、拝命します」
早朝に神社にお参り、なんか浄化されそうだな。いや、スピリチュアル信じてない人間の言うことじゃないな。
でも、自分が叶えたいことをはっきりさせておくのは悪くない。そういえば去年も七夕の短冊書いて、その時の願いのひとつは今のところ叶い続けてる。
うん、神頼み、けっこういいかもしれない。
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