番外編 好きなもの、好きなこと
祟ってる奴がいなくならないように、いろいろ頑張っている。基本的には、あいつが喜ぶことをすればいいと思う。
でも、あいつが好きなこと、いまいち詳しくないんだよな。女抱く練習させてやったら喜ぶかと思ったけど、全力で固辞されたし。食の好みはなんとなく把握してるけど、好物確定なものはサクレってレモンアイスしか知らないし。
どうしようかな……いきなり聞くのもなんか唐突だしな……。
ふと、スーパーのおまけでもらったカレンダーが目に入った。あ、そうだ!
『おい、お前、もうすぐ誕生日だよな』
祟ってる奴に、昼飯の時聞いてみた。祟ってる奴はちょっと面食らった顔をしたが、素直にうなずいた。
「え? あ、うん、そう、日曜。またケーキ買いに行こうか?」
『買う! あ、でも、それじゃなくてな』
誕生日プレゼントに、何が欲しいか聞こう。そしたら好きなものが自然に聞き出せる。そういえば、マイナポイントの話した時、スーパーで好きなものひとつ買ってやるって約束したし、それと誕生日プレゼント合わせたら、こいつの好きなものが二つわかることになる。
『あのな、スーパーでお前の好きなもの二つ買ってやる。もちろんワシの金だ。あ、買うのはコンビニでもいいし、駅ビルある方の駅の店でも、前行ったショッピングモールでもいいぞ。二つ、なんでもだ』
「え、ありがとう、でも何で二つも?」
祟ってる奴は、目をぱちくりした。
『マイナポイントで買ってやるって言った分と、誕生日プレゼントで、二つだ』
「でも、期限切れでもらえなかったし、代わりの二万もスマホで……」
スマホ自体は回線が開いてなくても買えるらしくて、あるうちに買おうと言われたから、もう注文して料金を渡してある。
『いーから! 二つも買ってやるって言ってるんだぞ、何でも!』
ワシは箸を置いて、立ち上がって祟ってる奴の肩をバシバシ叩いた。
「そ、それはどうも……うーん、じゃあ、スーパーで何か二つ買わせてもらおうかな。明日か明後日、千歳が行く時に一緒にスーパー行けばいい?」
『明日行くぞ』
「じゃ、散歩がてらついてくよ」
『何買いたいんだ?』
「うーん、品揃えを見て決める」
気を持たせるなあ。
次の日、一緒にスーパーに行って、星野さんと会ったのでおしゃべりしてたら、祟ってる奴は星野さんにあいさつしてから「俺、適当に見て選んでくるね」とスーパーの奥に行ってしまった。
星野さんが聞いてきた。
「今日は和泉さんも買うものがあるの?」
『えっと、誕生日プレゼントとかで、なんでも二つ買ってやるって言ったんだ』
「スーパーで買えるのかしら?」
『うーん、あいつがスーパーでいいって言ってたから、買えるんじゃないかなあ』
星野さんと、夕飯のおかずの相談とか簡単レシピとか、最近作っておいしかったレシピとかを話しながら一緒に買い物してたら、祟ってる奴が戻ってきた。
「えっと、この二つでお願いしていい? 一緒に飲もうよ」
祟ってる奴は果実酒の瓶を二つ持っていて、片方は〈ノンアルコール サングリア〉、もう片方は〈白桃と杏仁〉と書いてあった。
『酒でいいのか?』
「うん、たまに少しならいいかなって。甘いのだから、千歳も好きだと思うよ」
『お前、甘い酒好きなのか?』
それなら、しっかり覚えておかないと。星野さんに聞いたけど、最近はノンアルコールのチューハイが結構あるらしいから、こいつの腹具合気にしなくても飲めるやつがあるかもしれない。
祟ってる奴は、頭をかいた。
「あー、うん、まあ……甘いのだと一緒に飲めるかなって……レモンサワーとかジンライムも好きだけどさ」
あ、それならノンアルコールのチューハイでもあるんじゃないか?
『じゃ、それも買ってやる』
「え、そんなにいいの?」
『ノンアルコールのが売ってたらな』
後で酒コーナーに寄ろう、と思って、ふと気づいた。こいつ、レモンのシャーベットアイスが好きなんだから、酒の好みで言ったらレモンサワーとかジンライムが先に来るんじゃないか? 別に甘い酒好きでもおかしくないけど……。
星野さんが笑った。
「和泉さん、千歳ちゃんと一緒にお酒飲みたかったのねえ、それで甘いお酒選んだの?」
え?
祟ってる奴は、ちょっと戸惑った顔をしたが、やがて照れくさそうな顔をして頭をかいた。
「まあ、その、はは……」
ワシは祟ってる奴を軽くどついた。
『お前の好きなものじゃないと誕生日プレゼントにならないだろ!何でワシの好きそうな味で選ぶんだよ!』
甘い酒、確かにうまそうだけどさ!
祟ってる奴はあわあわして言い訳した。
「いや、その、甘いのも好きだし、好きなもので千歳と一緒に飲めそうなのを選んだ感じで、遠慮とかじゃなくてさ」
星野さんが首を傾げた。
「ていうか、今思ったけど、千歳ちゃん、お酒いいの? 戸籍上はまだ十八歳なんでしょ?」
「あっ……」
祟ってる奴は固まった。
「あー、完全に忘れてました……どうしよう」
「まあ、サングリアの方は問題ないんじゃない? 実質ジュースでしょ? それに本当は、とっくに二十歳超えてるもんね」
「うーん、じゃあ、外では気をつけます……二十歳ってことになるまでは家で飲もう、いいよね、千歳?」
『う、うん』
ワシはなんとなくうなずいた。
ん? 話を整理すると、こいつレモンサワーとジンライムと甘い酒が好きで、ワシと一緒に飲めそうだから甘い酒選んだってことだよな?
じゃあ、一緒に飯食ってても、一人で酒飲むのは気が進まないってことかな? そういえば、藤っていうおっさんの頼み聞いて旅行に行った帰りも、ビール分けて一緒に飲んだな。
しょうがない、じゃあこいつが飲みたい時は、なるべく付き合ってやろう。
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※和泉個人の好みとしてはレモンやライムなどの柑橘系フレーバーが好き
※ただし、大体の人は一緒にいて楽しい人と一緒においしいものを飲食するのが好きだし、そんな相手がおいしいものを飲食して喜ぶ顔を見るのが好き
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