これを拡散してほしい
悪霊の核が子供だと聞いてから、ずっと考えている。
十三歳の子供なら、母親がおかしくなったのが悲しくてやったなら、今回の件は罪を問わないであげてほしい。死人も怪我人も出なかったんだし。
というか、十三歳の子供が、異能を持ったとはいえあれだけのことをしたのに比べると、十三歳だった頃の俺が少し情けなく感じる。当時の俺は、ちょうど中学に上がったから、勉強が忙しいと言って、できる限り母親の活動から距離を取ることしかできなかった。
でも、今の俺は大人だ。大人なんだから、できることはできるだけしたい。母親を狂わせた責任を取れるなら、両親を放置した責任を取れるなら、そうしたい。
両親のシンパを全員説得するわけには行かないけど、俺は、父親のイメージダウンをさせる材料を握ってる。
まあ、父親のInstagramコンテンツがほぼ全てパクリコンテンツだというくらいだけども……。イメージダウンくらいなら、まあまあいけると思う。
両親のシンパはSNSを盛んに使ってるから、SNSにその事実をわかりやすく流せば、多少は期待できるだろう。
朝ごはんの後、食器洗ってすぐパソコンを立ち上げたら、怨霊(黒い一反木綿のすがた)に不思議そうに聞かれた。
『あれ? 今日、仕事休みにするって言ってたじゃないか』
「んー、仕事じゃないんだけど、ちょっとね。やっておきたいことがあってさ」
ブラウザを立ち上げ、父親のインスタを改めて見直す。前気づいた時にまとめた、パクられ元のサイト集を元に、父親のパクリをネットで告発できる資料を作る。さまざまな情報にあたり、それをを見やすくわかりやすくまとめるのは、俺がよくやってきたことだから。
父親のインスタには、去年台湾や中国に行った時の写真もあった。流石にこれまでパクリではないだろうな、本人が写った写真たくさんあるし……。
……え? 台湾や中国? コロナ禍のこの時期に?
俺は、あわてて国のサイトを調べた。やっぱりそうだった。新型コロナワクチンができてから、行く国にもよるけど、海外渡航にはワクチン接種証明書が必須だ。台湾も中国も、ワクチン接種証明書が必須の国だ。
つまり、父親は反ワクチンを唱えつつも、自分はちゃっかりワクチンを打っているということ……? 打っていないのだとしても、ワクチン接種証明書を偽造したということ……?
前者なら、両親のシンパになるような人たちには、致命的な事実だ。後者なら、明確に違法だ。
「……これをメインに、パクリはサブでやるか」
追加で資料をまとめる。wixと格闘しながらまとめサイトを作る。
サイトを作ってから、この事実の拡散方法について考えた。
まあ、CEOが変わった混乱があるとはいえ、Twitterにメインで拡散するのが有効だと思う。もちろん、FacebookとInstagramにも流す。でも、俺のWebライター名義のTwitterアカウントでまず流すとしても、あまりにもフォロワーが少ない。
拡散の起爆剤が、いる。
「……頼むだけ頼んでみようか、割とスキャンダラスだから、無理かもしれないけど……」
俺は、知り合いで一番Twitterのフォロワーがいる人、すなわち狭山さんの作家名義Twitterアカウントを開いた。
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