SNSを調べたい
怨霊(命名:千歳)のTwitterアカウントに出てきた神沢あざみのおすすめツイートは気づかれないように消した。何も見なかったことにして、風呂に入って寝ようと思ったけれど、眠れなかった。
俺の両親は、ネットでそんなに活動しているのか? 作りたてのアカウントに関連ツイートが出てくるって、どれだけ手広くやってるんだ?
布団に入って、一時間くらいもやもや考えて、寝るのを諦めた。起き出して、パソコンを立ち上げる。
タブレットを見ながら深夜ラジオを聞いていた千歳(黒い一反木綿のすがた)が、不思議そうに俺を見た。
『あれ、眠れないのか?』
「うん、ちょっと気になることがあって、調べたくて……気にしないで、ラジオ聞いてて」
神沢あざみのTwitterアカウントを開き、フォローから辿ろうかと思ったが、まずは正攻法で行こうとGoogleで「和泉和漢薬」を検索する。公式サイトが出てきた。サイトに貼られたリンクによると俺の両親は、facebookとInstagramで主に活動しているようだ。
父親のfacebookを見るが、Instagramに投稿している画像を流すのが主のようだ。Instagramに飛ぶ。ごく普通の漢方知識の文章を画像にしたものを定期的に投稿して、ライト層を取り込もうとしているようだが……。
その画像の中に、既視感のある記述を見つけた。いや、見覚えがあるどころではない、これは、俺が多田さんのサイトで書いた文章だ!
父親のインスタアカウントの画像一覧を開き、上から下まで流し見る。所々に、多田さんの所で俺が書いたネタを彷彿とさせる画像があり、全部チェックしたら全部パクられていた。
もしかしたらと思い、他の画像の文章も見る。画像の中でそれなりに特徴的な文章を探して、Google検索する。……元ネタらしきページが出た。突き合わせて確かめてみるが、完全にパクっている。え、このインスタ画像一覧、もしかしてパクリ放題なのか? 確かに、ネットの文章をコピペしたものを画像にしたら、文章で検索しても引っかかりにくくてバレにくいが……。
腰を据えて、ひとつひとつの画像を調べる。……最初の方の数投稿を除いて、全部パクリ元が見つかった。
あまりにもパクられたサイトが多いので、サイトのアドレスをメモ帳にコピペしてまとめながら、俺はつぶやいた。
「……見下げ果てたな」
ほぼ詐欺をしてる両親を、この十年よく思ったことはなかった。しかし、父親は自分の言葉で語ることすらできないのか。
かつてなく心が冷えていくのを感じ、同時に少し意外に思った。両親には、変わってほしい、まともになって欲しいという願いを捨てきれていなかったけれど、それが消えて、ただひたすら冷徹な気持ちになっていたから。
どうしてだろう? やっぱり、自分の仕事を汚されたことが大きいのか。
……Webライター、消去法で選んだ職業だけど、結構思い入れというか、プライドあったんだな、俺。稼ぎはもっと欲しいところだけど、仕事の成果を評価してくれる人がちゃんといるしな……。
考えていると、千歳が心配そうな声をかけてきた。
『おい、もう寝ろよ、もう少ししたらラジオが朝だって言うぞ、明日も仕事なんだろ?』
顔もだいぶ心配そうなので、おれは気まずくなって頭をかいた。
「あ、ごめん、もう寝るよ……ちょっと寝坊するかも」
『寝ろ、ほら』
パソコンを閉じて布団に潜り込むと、千歳が布団の上からぐるぐる巻き付いてきた。
「え、何、何?」
『もう起きるなよ、七時までちゃんと寝なきゃ承知しないぞ! お前具合悪くなったらすぐ寝込むのに、普通に寝る分削ってどうするんだ!』
「わかった、わかった、ちゃんと寝ます、朝散歩サボって寝ます」
『最近朝寒いから、散歩の時間変えろ』
確かに、散歩始めたの夏だから朝歩いてたけど、最近は昼くらいのほうが気温が良くて歩きやすいな。
「じゃあ、お昼ごはん後とかに散歩するから、付き合って」
『ついてってやるから、寝ろ』
「はーい」
俺は目を閉じ、そしてかなり疲れて眠いことに気づいて、垂直的に眠りの世界に落ちていった。
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