番外編 南さやかの裏面

今日はいい日。推しカプの生活を見守る担当になれたから。

人外と、それと同居している割と孤独な男性。仕事関連で知り合った組み合わせを推してしまうのは我ながらどうかと思うんだけど、性癖ドストライクなんだから仕方ない。


思えば、小さい頃から他人同士の関係にに興奮していた。思春期に入ってから創作界隈でそういうのを萌えと呼ぶと知った。

小さい頃から鼻血を出すことが多かったが、それは萌え過ぎていたからだ。周りが心配するし、自分でも煩悩が強すぎるのかと悩んで、神道系の出身なのに仏門に入ったが、素知らぬ顔をしながら萌えるのがうまくなるだけでまったくおさまらなかった。

滝行でも禅でも抑えられなかった萌えと鼻血だが、鼻血に関しては耳鼻科で治療した上で内科で高血圧の薬をもらったらおさまった。現代医学の勝利。

煩悩を抑えるという目的を持って真面目に修行したし、それなりに〈そういう〉素質もあったので、わりあい評価されて〈そういう〉仕事をちゃんと任されるようにもなった。棚からぼた餅。


涼しい顔で、でも内では激しく好みのカプを推す気持ちに溢れる状態を作れるようになって、そして出会ったのがあの二人。

最初に会ったのは和泉さんの方だけだけど、その時点ではまだ推せるカプだとわかっていなかった。けれど、和泉さん本人の言葉を聞いたり、二人の調査資料を読んだりするに連れて、「この二人、めちゃくちゃ推せない……?」という気持ちが高まっていった。

世間的に見てもかなり不幸で孤独な青年と、彼を祟るために彼の子孫繁栄を願ってあれこれ世話を焼く怨霊。めちゃくちゃ見守りたい。許されるなら、壁になって見守りたい。

そういう目で一度見ると、二人はとてもいい感じのカプに見えて、もう私は後戻りできなくなってしまった。二人の温泉旅行を盗聴する機会に恵まれたときは(後ろめたさはあったが)推しカプの仲が良すぎてものすごく耳が幸せだった。

幸いにも、あの二人が一緒にいて幸せでいることは、怨霊の暴走を抑え、世界平和につながるようだ。つまり私の推し活は世界平和に役立っている。

世界平和のために、何より私の性癖のために、あの二人にはできるだけ仲良く幸せに穏やかに暮らしてほしい。

あっ、でも、千歳さんかバラバラになった時、千歳さんのために必死になる和泉さんも良かったしちゃんと和泉さんについて戻ってきた千歳さんも良かったので、取り返しがつく程度の被害で絶対に解決するんだったら、推しカプの結びつきが強くなるイベントもたまに欲しいです……。

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