あなたになるべく食べさせたい
物価高騰の折である。最近何もかも値上がりだ。千歳には食費を月三万渡してそれでやってもらっているが、たまに高いおかずを千歳が自分のお金で買ってきていても、このところかなりギリギリみたいだし、ひとまず三万五千円に増やそうかと思う。
朝食の食器洗いを済ませてそう切り出すと、千歳は変な顔をした。
『ワシ、精のつきそうなちゃんとした飯は意識してるけど、わりと自分の食べたいもの好きに作って食べてるし、少しは出せるぞ』
金谷さんちの神社とのサブスク契約で、千歳には毎月十万渡している。以前渡した四十三万円もだいたい残っているようだし、自由になるお金はそこそこある身分だ。でも、千歳が自由に使えるお金は、なるべく取っておいてほしいんだよな。
「うーん、俺今は仕事わりと順調にできてて、追加で五千円くらい出せる余裕あるからさ」
『でもワシ、毎月十万あってもそこまで使わんし』
「俺が出せるときは食費出すから、俺がいきなり調子悪くして仕事できなくなって金が足りない、なんて時に千歳に頼らせてくれれば、それでいいよ。なるべくそうならないように努力はするけどさ」
千歳は首を傾げたが、一応了解してくれた。
『じゃあ、わかった。お前が金ない時用にとっとけばいいんだな』
「よろしく。でも基本は千歳のだから、好きに使っていいんだからね」
「うん、明日は狭山先生の小説の漫画版、ワシの金で買うからな!」
千歳の中で狭山さんの位置がえらく上がっている。完全にファンだなと俺は苦笑した。
千歳が来てから俺は本当にいろいろ世話になっていて、おかげで物事が少しずつ順調に回りだしている。体も少しずつ良くなってきているし、仕事もいい条件が多くなっているし、何より体力的に粘りが効くようになって、これまでより多めに仕事ができるようになった。
ここまでしてくれた相手だ、経済的によほど苦しくならない限り、千歳が食べるものの費用は俺が出したい。
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