お菓子を買うだけ考えたい
家からバス停まで歩いて、いつもと反対の方向のバスに乗って、いつも行く最寄りの駅の隣駅に行くと、期日前投票をやっている駅前ビルはすぐそこだ。投票受付に結構人が並んでいるのを見て、怨霊(女子大生のすがた)(命名:千歳)は驚いた顔をした。
『ずいぶんたくさんいるな!』
「まあ、投票率高いのはいいことだよ」
列に並びながら千歳と話す。
『きじつぜんとうひょう、って、なんか難しいのか?』
「いや、選挙用の郵便に入ってる紙切れ一枚持ってけば大丈夫。もしそれ失くしても、身分証明書があれば大丈夫」
『へえー、お前入れたい奴いるのか?』
「いや、別にいないな……」
千歳は口をへの字にした。
『じゃあなんで来たんだ、わざわざ』
「だって、嫌な候補とすごく嫌な候補とものすごく嫌な候補しかいなくても、どこにも入れないでものすごく嫌な候補が当選したら、それはそれで嫌だろ」
『お前、今めちゃくちゃ嫌って言ったな……』
「しょうがないじゃん、事実だし。他にも、候補としては比較的マシな気がしても、所属してる党がダメダメとかあるし、難しいんだよ結構」
『大変なんだな……』
列が進んで、受付まで来た。千歳も選挙スタッフに選挙用の紙切れ(請求書兼宣誓書)を求められたが、俺が
「付き添いで来てもらってます、投票はしないけど入れてもらえませんか?」
と言ったら入れてもらえた。
物珍しそうにきょろきょろする千歳に「人が書いてるのを見ようとしたらだめだよ」と注意しつつ、俺は嫌な候補と嫌な党の名前を書いて投票箱に入れた(ものすごく嫌な候補とものすごく嫌な党が当選したら嫌なので)。
「終わったよ、行こう。寄りたいスーパーって向かいのところだよね?」
『うん、近所のスーパーに売ってないお菓子があるか見たい』
「じゃあ行こう」
駅ビルを出て少し歩いたところで、後ろから知らない人の声がかかった。
「す、すみません、そこの人! そこの女の子と二人連れの人!」
声のした方を見る。割とラフな格好の、俺と同年代の男がいた。周りに女の子連れの該当者は見当たらない。え? 俺に声かけてる?
俺ですか? という意味を込めて、俺が自分を指差すと、男は真っ青な顔で冷や汗を額に浮かべつつ、言った。
「そ、その一緒にいる子……どういう存在かわかってて、一緒にいるんですか?」
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