第22話 出て行ったルディ
ドンドンと部屋のドアがたたかれた。もう朝?
ザビーネさんが
「シャル起きな!!大変だよ!あんたがいつまでも寝てるから私が代わりに坊ちゃんを起こしに行ったら坊ちゃん消えてて机に手紙が!!」
「え?」
私は欠伸をするシロロを跨いでドアを開ける。
ザビーネさんが
「旦那様達も起こさないと大変だよ!坊ちゃん家出したよ!シャル!侯爵家の方に帰ってないか連絡しておくれ?」
と手紙を押し付けてザビーネさんがバタバタと旦那様達を起こしに行った。手紙を開いて見ると
ーお父様お母様、ザビーネさんコペルニウスさん、クソフリッツ…シャルロッテ様…ごめんなさい俺には荷が重いんで逃げます!!
さようなら!!お元気で!!ー
とか書かれていた!!
はあああああああ!?
昨日なんか様子おかしかったけど…あいつ、あいつ逃げたの!!!??
「うそぉ…」
「どうした?」
とシロロが人間姿になって肩に頭を置く。グイッと押し退け
「なんかルディ逃げたみたいなの」
と言うとシロロはめちゃくちゃ喜んだ!!
「そうなのか!!なんと軟弱な!!まぁあいつがこの家のボスになるのは気に食わなかったからちょうどいいではないか!やったな!主人!ある…じ!?」
シロロが急にオロオロしている。どうしたのかしら?
それになんだか心がツキンツキンと痛いの。
ーオイテカレター
と言う気持ちが降ってきてドッと私はクズ折れた。
「主人ーー!!!」
シロロが叫んでいる。私は泣き出していたのだ。
「ウッウッ…ルディの、ばか!!私を…監視しなくていいの!?」
悲しみが込み上げてきた。なんで?どうして?置いてくの??
あんたいつも側に居たじゃない!?
どこへ消えたのよ!まだ冬なのに!凍死でもする気なの?
「主人…泣かないで」
シロロが涙を舐めようとしたので押し退けた。
「主人…」
*
「まぁ…あれでしょうな」
使用人達と男爵様にフリッツやらウィニーちゃんにアランまで駆けつけた。
「あれだね…」
「どれですか?」
誰も突っ込まないので聞いて見ると
「後継ぎ嫌だから逃げたんだよぉ!!」
とフリッツが言う。
「ええと…」
「いや。それもあるだろがたぶんシャルロッテさんと中々話せないから自暴自棄になって逃げ出したんだな、弱ええなぁ。あいつ!」
とアラン。
「引き継ぎが難しかったか?」
と男爵。
「まぁともかく皆坊ちゃんにあんまり優しくなかったので元々捻くれた性格が災いして拍車がかかり耐えきれなくなったと言うところでしょう」
とコペルニウスさんが足をさすりながら言うと皆は納得して
「ああー…」
「そうかも」
「だな!」
「それだね」
とうなづいている。
それから私を見る。
「えっ!?」
と言うとフリッツは
「愛しのウィニーちゃんよ、あの阿呆の居所わかるかな?」
と言うとウィニーちゃんは水晶を取り出すと
「だいじょぶ!任しといて!むーん!ダーリンの弟の居どころを示せ!!」
と言うと水晶は光りぼうっとしてそこになんか鼻が映った!!
「あ、ウィニーちゃんもっと引いて引いて!」
「ふぁい!」
とウィニーちゃんが引くと映像がルディを捉えた。皆それを見て一瞬静まり返ったが…ついに耐えきれなくなり
「ブハっ!!こいつ何してんの!!?」
「おいおい!かまくら作ってこれ!!遭難してる!!!!」
ルディは一人分の小さなかまくらを作りその中に膝を抱えてボヤッとしていた。周りは視界が悪くあきらかに遭難している!!
「あ、阿呆だ!!」
「皆やめてあげてよ…」
と奥様が言いごほんと男爵は言う。
「んんん…ではまぁ…捜索は任せたぞフリッツ?」
「んえ?俺ぇ?この阿呆迎えに行くの?」
「お前仮にも冒険者だろうが?それとも弟を見殺しにして男爵になるか?」
と男爵が言うとフリッツは首を振り
「えっ!?それは嫌だ…。でも俺が行くより…シャルロッテさんが行く方が喜ぶんじゃね!?」
と言うと皆はうなづいた。
「ええ!?なんでえ!?」
「なんでえ?じゃないよ、あんなに泣いといてあんただって会いたいだろ?」
とザビーネさんに言われ
「ぐうっ!」
としか言えない。
シロロは元気なく
「主人が泣くのは嫌なのである。あいつめ許せん!」
と言う。
結局フリッツ、ウィニーちゃん、シロロ、私で防寒着を揃えてルディの捜索をすることにした。
「いやっ!寒い!」
「当たり前だよ!ウィニーちゃん達なんてこれよりもっと極寒地帯でモンスターと戦ったりしたことあるよ!?ね?フリッツ様!」
「うんうん、そうだねー!寒くて暖めあって…」
のろけ話が始まりそうだったので
「はいはい…もういいわ。早く探しましょう?」
とウィニーちゃんやシロロの鼻で探し回ること数時間…ようやくなんかそれらしきかまくらがありそこに膝を抱えたルディが死にそうな顔を向けた。
「うわー…なんだあれ。死んでる?」
「いや生きてるでしょ?いちおー」
とフリッツとウィニーちゃんは言い、シロロは
「主人…行ってくるのである…くっ!」
とシロロは泣きそうだ。
私はとりあえず近づいた。するとボソリとルディが
「つ、ついにシャルの幻覚が見え始めた。もう俺は終わりだ。死ぬのか…」
とか言っており目もトロンとしていたので思い切りバチンと頰を叩くが…
「………なんか痛い様な…気のせいか…」
「気のせいじゃない!しっかりしてよルディ!迎えにきたのよ!!」
と言うとルディは
「はっ!?天国へのお迎えか!!とうとう」
と言い出した。ダメだこいつ。
「とにかくほら立って!!ここから出て家に帰ろう?」
「……嫌だ…俺の居場所なんてないんだ。自由もないんだ。もう死にたい…」
と言い出した。
「我儘言わないでほら本当に死んじゃうよ!?皆心配してるよ?」
と言うとルディは後ろを見て
「心配?あれのどこが?」
と言うから後ろを見るとフリッツとウィニーちゃんはゲラゲラ笑っておりシロロはグスグスと雪玉を作っている。
「いや…あれは…」
「ほらな!ああいう奴らなんですよ…」
と拗ねてしまうルディに
「私は心配したわ、泣いたのよ?貴方のせいだわ…早く帰りましょう?」
と言うとルディは顔を上げて私を見る。
「嘘だ。夢だ。本物のシャルは俺にも優しくない。皆俺のことなんか考えてないよ」
「ちょっともう…いい加減にしなさいよー…。心配したって言ったでしょ?ルディ?帰ってあったかいスープ飲もう?ね?いい子だから」
と言うと
「………はあ…わかりました…寒いし帰る…」
とようやく立ち上がる。少しホッとした。
「ほらルディ…」
と手を差し出す。ルディは驚く。そうして震えながら手を手袋越しに繋いだ。
私はルディの手を離さず家まで歩いた。
前を歩く二人はまだクスクスゲラゲラ爆笑しながら帰る。
シロロはしょんぼりしている。
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