第21話 俺の気持ちなんか(ルディ)
俺は双子の弟として田舎のクラウスナー家に産まれた。近くの村の村長の息子アランとは幼馴染でよく遊んだ。
俺はアランやフリッツが木剣で遊んでいる中1人木陰で本を読んでいる様な子供だった。この領地を治めるのは双子の兄…一応長兄のフリッツだと思っていたから俺は13になると王都へ行きロッテン侯爵家へ仕えた。
歳が近くのお嬢様の付き人執事見習いになった。
黒髪でアメジストの瞳を持ちとても綺麗な顔で男なら誰でもくらっとくるくらいの美少女ではあった。
俺だって最初くらっときた。
でも周りもそうなんだと知るとこれは恋とかじゃ無いなと思う様になった。だって皆に言われてるからそう言う存在なのかと思うだろ。
お嬢様…シャルロッテ様は婚約者がいるしな。しかも超顔のいい絵に描いたような王子様だ。エドガー王子様はよくお茶会に誘いシャルロッテ様と談笑していた。俺はそれを隅っこでただジッと見ているのみ。それが仕事であったから。
学園に入るまでは。
学園に入りしばらくすると王子はシャルロッテ様を放置して聖女と呼ばれるルトレシア様と接点を持ったのか度々2人が一緒に仲良く話したりしているところを俺とお嬢様は目撃していた。婚約者を放置して普通するか?
しかも…お嬢様が気付きやすいようわざと浮気現場を見せつける様な狡猾さを持っていると俺は感じていた。
シャルロッテ様がエドガー様のことを大好きなことを俺は誰より知ってた。いつもいつも口から出るのはエドガー様のことばかりだからだ。鬱陶しいくらいエドガー様のことばかり。まぁあんな顔良かったら女なら誰でも靡くだろう。
俺もそこそこはいいけどあれには負けるわー。美形め、くそ!
しかしある日決定的瞬間が訪れた。
エドガー様と聖女ルトレシア様が木の下でキスしているのをばっちりお嬢様と目撃してしまい、案の定魔力制御できないお嬢様は暴走を引き起こした。旦那様から娘の暴走を引き起こす様な事は絶対にあってはならない、全力でお止めしろと言われていたのに間に合わなくて……結局…シャルロッテ様は皆の前で恥晒しみたいに婚約破棄され断罪された。
エドガー王子は狙っていた様に思えた。
両親や弟からも呆れられ表向き勘当させられたお嬢様を俺の家で面倒見る様にと手を回された。
だから毎月お嬢様がどの様にうちで過ごしているか俺は報告する係に選ばれてしまい結局家に戻る事になる。
馬車の中で中々泣かないお嬢様が泣いた。少々言い過ぎた。お詫びを込めて頭とか撫でた。
慰めるのが下手な俺。
昔から自分が素直じゃ無い事は認める。
シャルロッテ様…シャルが目の前で髪を切ったのはショックだった!こいつ!人が毎日手入れしてやった女の命の髪をあっさりと切った!失恋すれば切るものだと思ったんだろうけど未練ありありなのも俺は知ってるぞ!!
うちで働き出して大分薄れてはきた様だけど…なんかいつまでもシャルにはモヤモヤした。いつもなんか上手くいかないしたまにまだ王子のことをぐちぐちと言うのでうるさいからと口を口で塞いだ。
最初俺は何をしているのかと思ったが結局は口論になった。
それから実はガンガンに意識した。シャルはなんとも思ってないのかめちゃくちゃ普通だったのが気に食わなかった。
熱を出した時は弱っていていつもより可愛く見えたので優しくした。何か調子が変だ。手を握り安心させてやったりした。
俺も眠くなり起きたら綺麗な顔で眠っていたシャル。自分の気持ちを確かめた。俺は…シャルのことが…好きなのか…。
気付いたら唇にキスを落とし逃げた。
またもや何をしているんだ?俺は。
でもそれからもシャルは普通だしなんか気に食わない。
そこへミリア様やルトレシアの訪問が相次ぎコペルニウスは骨折して雪かき手伝う羽目になるし村にスノーウォルフが襲いに来ると言うしどさくさに紛れ寝ていたシャルは実は狸寝入りで起きててキスした事もバレたし俺は必死で誤魔化すしで…後はまぁ…スノーウォルフと戦ったり色々ありボスがシャルの使役獣になり…人間になったら顔がいいとか詐欺か!!と思ったり、
シロロがシャルにメロメロだったりして俺は相変わらず素直で無いのを久し振りに会った幼馴染やウィニーちゃんと婚約したと戻ってきたフリッツに見抜かれたりした。
シロロは相変わらず俺をライバル視してきて鬱陶しい。シャルと話す時間はシロロのせいで格段に減る。シロロはいつもシャルにべったりだ。入る隙も話しかける隙もなくたまに遭遇してもシロロと言い合いになるだけで2人になる時なんかない。
俺は男爵になるしかなくてお父様から引き継ぎの勉強を真剣に始めるしかなかった。
誰も俺の気持ちなんか汲んでくれない。シロロはムカつくし。アランはミリア様に夢中で村を抜け出しコソコソしてるようだ。あいついつか捕まるぞ!?
フリッツとウィニーちゃんは結婚に向けて準備し始めた。2人で家探しをしている。双子なのに自由に恋して生きるフリッツが羨ましい。苛々する。死ねフリッツ!!
「はぁ……」
風呂から上がって庭に出てため息をついた。このまま逃げてしまおうか。一人で何処かへ行き着き…行き着いて何しよう?考え込んでいると後ろから
「…ルディ?」
と声がしてビクっとした。
「シャル!?ど、どうしたんですか?」
「そっちこそ何してんの?風邪引くわよ?」
まだ冬は終わってない。雪も積もった庭に出てる俺を不思議に思って当然だろう。
「別に!ちょと湯あたりしたので覚ましてるだけです!シャルもお疲れ様!!…シロロは?」
「シロロはお部屋で待ってるわ」
ああ。あのクソ犬…。シャルを押し倒してないかハラハラするがそんな風にも見えない。やはり侍従関係もあるからな。拒まれたらあの犬も凹むだろう。
尻尾振って主人の機嫌を取るのに必死なんだな。
「そうですか、シャルもとっとと寝ればいいですよ?」
と言うとシャルはこっちにきて顔を覗く。
「どうしたの?なんか…寂しそうね」
と言われてドキッとした。
寂しそう?俺が?なんで?
そりゃ遠くに行きたいとは思っていたけど…み、見抜かれた…。
そりゃそうか、俺の気持ちなんかいつも天邪鬼でバレバレだと皆にも言われるし
「別に?そんな事ないでしょ」
と言うとシャルはいきなり俺の手を取り
「あんた冷えてきてるわよ?もう一度お風呂に入って眠れば?」
と言う。
「はぁ…そうですね、そうします」
……さっさと離してくれないかな。クソ!胸がドキドキするし痛い。こっちはシャルのせいでこんなに振り回されているのに…。
思わずバッと手を離す。驚いたシャルは
「もうなんなの!?変なルディ!」
と口を尖らせた。
「……………俺……」
「ん?」
「…いや。なんでもないです、おやすみなさい」
と俺は風呂に向かう。
お湯に浸かるとなんか情けなくて泣けてきた。
それから部屋に帰ると俺は…荷造りを始め…その夜皆が寝静まったのを確かめ家を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます