第19話 ルディの幼馴染
「ルディ!!久しぶりだな!!」
応接間には健康そうな日焼けをした屈強な男がいた。髪は紺色瞳は茶色だがこらは確かに兄弟…に見えなくもない?
「アラン…どうも。相変わらずむさ苦しく暑苦しく半径3メートル以内にいないでほしいですね」
「…すげえ!ちょっと会わないうちに堅苦しい丁寧な言葉遣いに変わっとる!あはははは!」
と豪快に笑う。
「…唾飛ぶから口閉じて笑ってくれませんかね?」
「…お前…嫌味ったらしいのだけは変わってないな!」
「アランこそ…この前村に行きましたがあの時はいなかったですよね?警備兵のくせに…。大変だったんですよ?スノーウォルフ退治」
「ああ…それがよぉ…ちょっとその街に住む好きな女の様子を見に行っていたと言うか……俺も年頃だしよぉ!!がはははー!言わせんなよこんにゃろう!」
とアランはルディの背中をバシバシ叩いた。
「いてっ!痛い!何するんですか!クソ力!!」
この村から街までは数日かかるし乗合馬車の本数も少ないだろうからタイミング悪く数日間アランは街の方にいてスノーウォルフの話は知らなかったのだと言った。アランの行った街はフリッツのいるギルドの街ではない反対方向の街でありそこは商業ギルドが盛んな街なのだと言う。
「だからとりあえずお土産持って家に帰ってスノーウォルフ退治のこと聞いたんだ…。くそ、俺の仲間が何人か一回死んじまったらしい!クソ狼め!」
と言って今度は横にいたシロロが青ざめて汗を流す。生き返ったんだから許してあげてよ。
「ま、生き返ったし今は村を守ってくれてるらしいが…」
「あれ?こっちの綺麗なねーちゃんとすげえ男前の兄ちゃん誰?」
「えと…うちの使用人とその…ス…」
とルディが言おうとしたのをシロロが
「使役獣である!!こここここれは今仮の姿である!我は!こちらの主人の使役獣であるからして!!」
と急にボワンとシロロは可愛い犬サイズになって逃げた!!
ルディは冷めた目でシロロを見ていた。
「ほぉ!凄えな!使役獣って!カッケェな!!嬢ちゃんやるなぁ!!」
「…そんな…」
「そんで?ルディの恋人かなんか?凄えお似合いじゃん!俺なんかよぉ!帰ったら母ちゃんが見合い進めてきてよぉ!なんか知らんけどこっちに王都から追放されてきた元侯爵家の令嬢がいてそいつが男爵家の世話になってるとかいってたなぁ!ダメだよ!俺にはもう好きな女ができてしまったんだ!!
ミリア様と言う…手の届かない存在だけど!!」
「「ミリア様!?」」
とルディと私は目を丸くした!!
「ああ…たまたま…馬車がぬかるみにハマってたところを助けたらお礼にとお祖父さんの暮らしてる街に行く途中だったみたいでそのまま俺も着いてって食事を奢ってくれたんだ。一旦は王都へ戻ったらしいけどまた直ぐに街に戻ってきて祖父さんの顔を見にきてた。
俺はそれを陰から眺めてた…またミリア様とお話しできないかなって!」
え…眺めてただけかい!!
「……アランの口からまさか恋の話が出るとは思わなかった!無縁でしたからね…」
「そうなんだ!ああっ!ミリア様!今頃何をされてんだ?とりあえず俺も親に相談しようと戻ったんだ。将来結婚する予定の子と出会えたからと」
と言う。ルディは難しい顔をして
「んんん?待ってくださいよ?そのミリア様とは…両想いというわけでもないですよね?何ですか?勝手に言ってます??」
と言うとにこにことアランは言った。
「いやあ、俺の脳内ではもうすでに恋人で…」
「バカかお前。ほんとバカ。死ねよ。妄想で語るな!!」
と素が出たルディ。
「まぁそう言うなよ!とにかく俺は見合いをするわけにもいかねえからこうしてルディに会いに行きがてら断ろうとしてんだが、どいつだ?その元令嬢!!」
と言う。ルディはため息をついて…
「はああ。あんたの目の前にいるこの人ですよ。シャル」
と言うとアランはようやく
「あっ?あんただったか!!まさかこんな綺麗な人とは思わずすまねえ!ん?奢ってくれた時にミリア様から聞いたが…ルディに想い人がいてミリア様は振られたと愚痴ってたけど…あれってあんた?嘘おおおお!」
となんか私までバシバシと背中を叩かれる。痛いわ!
ギャンギャンとシロロが吠えた。
ボワンと元に戻ると
「我が主人に気安く触れるな!野蛮人!」
とシロロは睨む。アランはおっ?と言う顔をしてルディとシロロを交互に見て
「ルディの負けかな??」
とか呟いた!
「は!?何がですか?」
ギロリとルディが睨む。
「えっと…この娘さんのこと好きなんだろぉ?でも使役獣に容姿じゃ負けてるじゃねーか!すまんなぁ!ルディもそこそこはいけてるんだけどなぁ!後もう少しなんだよな!」
と変なフォローをされるルディ。
「はああ!?誰がこんな女を!?元は使えていましたが今は立場が逆転してますしこんな胸がなくて色気もないシャルなんか別にどうでもいいんですけど!?」
とルディは言う。何気に酷くない?シロロは怒り
「主人に対してなんたる無礼な!こんなに美しく綺麗な白髪に優しい眼差し!我は使えられて幸福だと言うのに!人間なら伴侶になりたい!あ!我人間姿にもなれてるんだった!!」
とハッとするシロロ!いや、流石にそれは!!
使役獣ともなると主人と会話でき、こうして人型になることもできるけど主人と使役獣が恋人とか結婚したとかは物語の中のロマンス小説くらいの確率である。現実には無いと言ってもいい。
しかしシロロはなんかうっとりと私に視線を向けて
「主人よ!!我は主と共に生きたいのである!一生添い遂げたいと思うのである!!主は素晴らしく美しいし!優しいしいい匂いである!眠る時もいつも我を抱きしめてくれる!!」
と言い出したからルディはギョッとした。
「え!い、いや…小さくなってる時ね!だって今は冬で寒いから!!」
と言うとルディは
「湯たんぽもあるのに犬ころと毛だらけになって眠るなんて汚い!」
と言い出した。
「失礼な男だな!!ほんとに!!気に食わん!何故こんなのが主人の主なのか!!」
とシロロは睨む。アランは
「まあまあ!とにかくあんた…シャルさん、俺は好きな人がいるからあんたの結婚は断わるぜ!!」
と言う。
「ああ…は、はい…。別に構いません…」
と言うとアランは
「なんで?どっちが好きなのあんたは?ルディとこの使役獣さん」
「んえっ!!?」
と私は驚く。
そんなの…数日前に使役獣となったシロロに好意を寄せられてなんか今プロポーズらしきものをされたが…、ルディとは別に恋仲でもないしむしろ好かれては無いと思うけど!?
いや、なんか2回くらいはキスされた様な…。いや、なんなのか??
ルディを見ると
「なんですか?俺は関係ない!使役獣と恋とか結婚とか物語ですか!?そんな人現実でいませんよ!!気持ち悪い!」
と言う。シロロは私の肩を掴むと
「ほほう!では男!我が主人と一緒になってもいいのだな!?」
と言いルディは睨む。バチバチと空間がなんか険悪な雰囲気になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます