第16話 スノーウォルフ

 ルディは雪かきを意外とせっせとこなしていた。


「え、嘘…」

 と驚いていると雪玉を投げられた。


「サボってんじゃないですよ!こんなの…ここでは小さい頃から皆やらされてますから!だから雪なんか嫌いなんです!」

 とぼやいた。

 私はお返しに雪玉を投げる。


「わかってるわよ!ささっさと終わらせるわよ!」


「冷たい…」

 とブツブツ言いながらもルディと私は雪かきを頑張る。お昼近くになりそろそろ昼食にしようかと家の中に入ろうとした時だった。


 男が1人息を切らしながら雪の中を歩いてきた。


「!?誰だ!何者だ!?」

 とルディが叫ぶと男は


「ルドルフ様ああ!!たっ!助けてくださいいいいい!村が!村にスノーウォルフの群れが迫ってて!!子供もいるのに!!」


「警備隊は!?」

 とルディが言うと


「もちろん男達は闘いに備えておりますが…」

 と伝令に来た男は震えながら言う。


「俺も行きます…後ギルドに緊急申請を出しましょう!それから騎士団にも討伐依頼を!…それまで何とか保たせるんです!!できる限りのことと女性と子供は家の中から出ないように!」


「わかりました!!」


「直ぐに支度をしますから一緒に行きましょう!!少し待っててください!シャル!この人を応接間に!暖炉に!」


「はいっ!」

 と私はとりあえず雪道を歩いてきた村の男性を招き入れた。

 ルディが男爵達に説明したり準備をしてる。騎士団やギルドに連絡するとしても到着には時間がかかるわ。


 ……私…私の力が有れば…守れるのでは?

 そうよ!私がスノーウォルフの群れをこの魔力で倒すのよ!!私が村から離れた所で囮になり魔力暴走すれば…一網打尽にできる!!


 名案だとばかりに早速ルディの所に行くと装備などを整えたルディに話をすると怖い顔して


「絶対にダメです!!シャルはここで待っていなさい!!」


「な、なんでよ?私には力があるわ!!」

 ルディは


「貴方の魔力暴走は怒りの感情で引き起こる!周りさえも巻き込む恐れがあること忘れてないですか?


 でも今回は魔物の群れです!凶暴なね!怒りどころか恐ろしくてお嬢様上がりのシャルなんか怯えてる間に食われて終わりだ!!」

 と言われる。


「な、なんとか怒りを引き起こしてみるわ!知ってるでしょう?私の力が有ればなんとかできる!騎士団やギルドのパーティが着くまで時間がかかるし誰も傷付けたくないわ!」

 しかしルディは首を振る。


「ダメです!成功する保証もないし、俺がみすみす貴方をスノーウォルフの生贄みたいに差し出すわけないでしょ!?これでも心配くらいしますよ!だからここで待ってなさい!」

 とルディは言う。


「嫌よ!!私は行くわ!!」


「なっ!我儘な!もうシャルはお嬢様でも無いし使用人なんたから言うことを聞きなさい!」


「連れてってくれなら私ルディの部屋を魔力暴走でめちゃめちゃにしてやるから!!」

 と言うとゲッと言う顔をした。もう一押しね!!


「く!…それでもダメなものはダメ…」

 と言うルディに私は


「ルディ!あんた…ずっと前に寝ている私にキスしたわね!?あれはどういうことなの!?」

 と問い詰めた!

 ルディはギョッとして慌てて


「はっ!?なっ?何の事、というかそんな事今関係な…」


「ふん、はぐらかしても無駄よ!このキス魔が!!帳消しにしてやるから連れて行かないと皆に言いふらしてやる!!」

 と言うとルディは青ざめ…


「くっ!ひ、卑怯者おおお…もう勝手にしなさい!」

 と言うので私も支度して一緒に行くことにした。村の男の人はダンという名前で私の事をルディの妻か恋人と勘違いしていた。ルディは私と一緒に馬に乗ってるからだ。ルディが後ろで手綱を持ち走っている。


 舌を噛むから喋らずにいなさいと言われて黙っている。

 並走するダンさんもとりあえずは村へと急いだ。


 村に着くと木の柵の門が開いて中に入る。村長達村の男達が集まりルディは状況を聞いた。


「スノーウォルフは現在西の森の方に集まってるようです!夜になると村にやってきて襲い始めるでしょう!」


「頭のいい魔物で昼でも魔物のくせに見張りをして眠りの番をしているんです!」

 ルディは


「成る程…頭のいいか。厄介な…しかし昼間行った方がいい!夜は奴らにとって圧倒的有利な状況になるし!村の男半数は残り武器を持つこと!


 残りは私と村の外に出て行く!魔法が使える者はいますか!?炎系だと有難い!」

 と言うと警備兵の数名が名乗り出て一緒に行くことになる。私を見て


「あの…ルドルフ次期男爵様…この方は次期男爵夫人様でしょうか?」


「えっ!?いや!違います!ただのアホな娘です!ちょっとだけ魔力量が多いだけの」

 と言うと男達はおおっと声を上げる。


「もしや回復魔法が得意とか!?」


「えっ!?」

 いや逆である…。

 ルディはため息を吐き


「こいつに回復なんかできない!そっちは期待せずに!とりあえず日が暮れる前に動きましょう!!」


 そう言うと私達は西の森に向かい馬に乗り走る。


 森の入り口に馬を止め歩きながら森へと慎重に入る。


 ルディに


「怖がってるなら引き返しなさい!」

 と言われ


「誰が!私がいた事を後で褒めることになるわ!」

 と言い私はなんとか着いていく。確かに魔物の気配はする。スノーウォルフじゃなくても森にはたくさんの魔物達が暮らしていたりする。


 周囲を警戒して進むとガサガサと茂みから2頭のスノーウォルフが顔を出してグルグル唸っている!!


 男の1人は火の魔法を放ったがひらりとスノーウォルフは避けた。


「くそう!!当たらない!!」

 村の男は悔しそうに呟く。すると2頭はそれぞれ別方向の茂みに入った!私達は背中合わせでどこから来るかと息を潜む。


 すると茂みが揺れた箇所があり村の男が、そこへ火魔法を放ったが


『ギュイ!』

 と言いでてきたのは別の下級の魔物だ!そしてグアっと油断した私達の隙を突きスノーウォルフが私の目の前に現れた!!

 な、何ですって!?もしかして私が女だから一番弱いと思って?


 牙を剥いたスノーウォルフが迫る!私は人形を前に突き出し口を開け溜まった魔力の塊を放つ!当たれ!

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