第15話 冬の訪れ
ルトレシアが去った後は毎日平和に過ごせた。私も何となくスッキリし悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなり今はもう気にしなくなりむしろ働く事が楽しいと感じて来た。
お嬢様だった時とは考えられない進歩である。旦那様やルディが視察のため領地に出かけて行き、奥様の話し相手やザビーネさん達とも打ち解けて来て私はこの生活にすっかり慣れたし庶民も楽なもんだわと考えるようになった。
そしてとうとう冬になりクラウスナー領にも雪がどっさり積もり辺り一面雪になった。私のいた侯爵領では見られなかった光景に最初は1人はしゃいでいたが段々、めちゃくちゃ寒いし雪かきが毎回大変で疲れる。
ザビーネさんも朝から
「うう!寒いねぇ!こう寒いと動きたくなくなるね…」
と暖炉前で手を擦り合わせる。
「そうですね。ああ…今日も雪かきだわ。霜焼けになっちゃう…」
とぼやいた。
「その前に坊ちゃんを起こしといで」
と言われてルディの部屋に行きノックをする。まだ寝ているのか返事がないので勝手に入る。ベッドで頭まで隠して寝ているようだ。
暖炉に火をつけて温めてやる。
それからベッドの山を揺らす。
「ルディ!起きなさい!!朝よ!!」
と揺らすと布団からチラッと眠そうな目が覗いた。
「……寒い。働きたくない。だからここの冬は嫌いなんです…」
「もう!そんなの皆そうよ!次期男爵になるんだからしっかりなさい!」
と布団を剥ぎ取ると
「ぎゃあっ!!寒っ!!シャルのバカ!!」
と布団を奪い返しガタガタ震えた。
「早く起きなさいよ」
「まだ部屋が暖まってないでしょ!」
と子供みたいに出てこない。
「全く!起きないなら外から雪玉持ってきて入れてやろうかしら」
と言うとルディはようやく起きて
「それは遠慮したい!!着替えます」
と言い私は外に出た。
しばらくするとルディは着替え終わり朝食へと向かう。
男爵や男爵夫人も揃っていた。いつもの食卓の風景であったが…男爵はルディに
「おはようルドルフ…。シャルロッテさん…」
と言ったので私は頭を下げて
「おはようございます旦那様、奥様」
と言うとルディも
「おはよう、お父様お母様」
と挨拶した。男爵は
「ルドルフ…本当に早く嫁を見つけて結婚して後を継ぎなさい!私達も引退して南国に行けないじゃないか!」
と言うとルディは
「お父様、冬が寒いからって南国に移住しようとしてるんですね…」
「当たり前だ。毎年領地の雪かきを手伝い私はもうクタクタだよ。早く引退しジュディスと余生を過ごすよ」
と言い出す。
「はあ、フリッツはいいですね。街のギルドに入り冬は遠方のクエストを受けてあったかい所に逃げてるんでしょうね…」
冒険者の志望は寒いの嫌だからなの?ルディも寒がりだけど。
「村長の娘さん達の中から選んだら?この際、誰でもいいから」
とジュディス奥様はもはや投げやりで押し付けていた。
「お母様もか…」
「それかシャルロッテさんでもお嫁さんにしたら?」
と言い出しギョッとする。
「「嫌です!!」」
と声が揃う!
「何で俺がこんな猿と!」
と言う。ギギギ!ルディの癖に!それに髪はようやく肩まで伸びてきたので私もう猿じゃないもの!
すると男爵も
「別にいいじゃないか。ルドルフはシャルロッテさんの事が好きなんだし」
と言い出した。確かに揶揄われてキスされたけどルディの意地悪だし
「なっ!お父様!?俺がこんなの好きなわけないでしょ!!」
こんなので悪かったわね!
「そうか?気のせいなのか?実はシャルロッテさんにも縁談が来ているよ。村長の息子さんだ。ほらルディの幼馴染のアラン君だ」
するとルディは青ざめた。
「嫌だ!!アランとか!」
と言い出す。ジュディス奥様は
「ふふふ、小さい頃はよくうちに村長と遊びに来ていたわね、フリッツとルディとアラン君、三人兄弟のようだったわ」
と思い出して微笑む奥様。
「あ、アランなんてただの荒くれ者じゃないですか!ダメダメ!シャルには似合わない!」
「アラン君に失礼だろう。ちょっと粗野だが村の警備をしてるし筋肉もあり男らしいぞ!」
と言う男爵。筋肉…ルディとは逆ね。
「とにかく絶対ダメだ!!大体俺には村長の娘達を勧めてどういうつもりです?このままじゃシャルとも親戚になる!!嫌だ!!」
と言い出した。
「やっぱりシャルロッテさんの事が好きなのね?この子は本当に素直じゃないんだからー!」
「すすす好きじゃないっ!!」
バンとテーブルを叩きルディはゼェハァ言ったところで…ドサリと音がした。
「ん?雪が落ちたのかな?」
と男爵が外を見てあっ!と青ざめた!!
雪の上に雪かき用のスコップが落ちていた。
「た、大変だ!!コペルニウスが!!…さっき雪かきを頼んだんだ!!」
ザビーネさんはそれを聞き外へと急いだ!!
ルディも男爵も厨房からも男手を集め雪を掘り起こす。そしてコペルニウスさんが雪の中から出てきた!
「あなたあああ!!」
とバチバチ叩かれるコペルニウスさんはようやく
「うーん…あいたたた」
と腰をさすった…。起きようとしたが力が入らずルディが手伝うと
「うぎいいいいい!」
と悲鳴を上げた。男爵は医者の手配をした。
雪道で来るのは遅かったが診察してもらうとコペルニウスさんは足を骨折したとのことだ。
「コペルニウス…とりあえず療養しなさい…」
「申し訳ありません…」
と謝るコペルニウスさん。
男爵はルディを見て
「ルドルフ…とりあえず雪かきの続きは若いお前がやりなさい」
「えっ…うそっ!?」
と固まる。
「坊ちゃん…うちの夫に代わり申し訳ありません!」
とザビーネさんが謝る。
「えっ!?やることになっている!??」
有無を言わさずルディは雪かきを手伝うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます