第14話 来訪者2
それからしばらくした頃…
なんと…エドガー様の浮気相手で現在は婚約者で未来のこの国の王妃となるルトレシア・ド・ナイト伯爵令嬢がやってきた。お忍びでやってきたのか頭には頭巾をつけてお婆さんのような格好をしていた!乗り合い馬車でひっそりとやってきたようだ!!
驚いた私やルディに
「お久しぶりです」
とルトレシアは挨拶した。
指には私がはめるはずの王家の婚約指輪がある。
「あの!この度はごめんなさい!!」
いきなり彼女は謝罪してきた!
怒りは湧くが私は人形もあるし時間も経ちそれなりに落ち着いてきたので今頃彼女が私に何の用なのか、本当にただの謝罪なのかとりあえず応接間にお連れした。
とりあえずこんな人でも一応未来の王妃である。気に触ることがあったらエドガー王太子様の怒りを買う。
ルディも横に座り
「一体どうしたのでしょうか?」
と聞くとルトレシアをはパッと泣きそうな顔をして
「私…あの…酷いことをしたと…ずっと謝りたかったのです!!でも王太子様に逆らうことなど出来ず流されるままに…」
と言い訳を始めた。流されるままね。確かに聖女と呼ばれようとも身分は伯爵家なので王太子様には逆らえないだろう。
「私も王太子様…エドガー様のことは好きなのですが、少々荷が重いと感じておりましたの…。結果的にシャルロッテ様を退学させ王都から遠ざけるなど思いませんでしたの…。
そして私は王太子様の婚約者となり今はお城で…毎日毎日辛い王妃教育を受けさせていただいてます!見てくださいこれ!」
とルトレシアは手袋を外し赤く腫れた痕を見せた。
「信じられないんです!鞭ですよ!?出来なかったら鞭で打つんです!いくら私が聖女の力でヒーリングできるからって!伯爵家の出だからって!
これはれっきとした虐めなんです!!」
と言い出した。私は頭がぐらりとした。
何を…何を言いにきたの?この子は?
愚痴?自慢?
というかもうお城で一緒に住んで本格的な花嫁修行みたいな事してるんじゃない…。やっぱり自慢か。
大体ね、私なんて小さい頃から侯爵家で躾けられて王妃教育だってあんたの倍くらい厳しかったわよ!小さい頃から鞭なんか受けてたっての!!手だけじゃなく頭も叩かれたわ!王妃になるのはそれだけ厳しいのよ!
「ミリアから聞いてここに来たのです!ミリアは私と仲が良くて!!ルドルフ様に振られたらしいですが…。その…私はエドガー様からシャルロッテ様が何処へ行かされたのか知らされませんでしたの。周りも口を閉ざして…ようやくミリアから聞き出したのです!」
と言う。
「私に謝罪しに来たことはわかりますが…それでどうしろと?王妃教育は厳しいものですわ。この国の王妃となるのですから」
と言うとルトレシアは
「そうですよね!!シャルロッテ様なら慣れてらっしゃるもの!私…私はもう疲れましたの!!エドガー様との婚約は辞めて貴方にお返ししたい!!
シャルロッテ様はエドガー様のことまだ好きですわよね!?」
とぬかした。
はあああああ!?
なんなのこの娘は…。今更何を…!?
するとルディが
「ルトレシア様…勝手ながら言わせて貰いますが婚約破棄されたのは王太子様の一声でありシャルロッテさんはそれに従ったまでです。
貴方も王太子様を愛しておられるなら厳しい花嫁修行如きで根を上げるなんて真実の愛とは言えませんね。ああ、都合よくシャルロッテさんが婚約破棄されるのを見るのが楽しみという趣味でございますか?」
とルディは怒り声だった。
「だ、だから私も家のことを考えてお受けするしかなかったというか…聖女の力を持っているのも生まれつき偶然ですし……」
ともごもご言い出す。やはりこの娘はただ辛い目に遭うのが嫌なのだ。聖女として今までチヤホヤされ生きてきたのだから。
「ルトレシア様…そんなに嫌ならエドガー様とお話しして厳しいものを和らげていただくとかすればよろしいでしょう?私では力になれませんわ。もう終わったことですもの。
それに私は魔力暴走を引き起こす危険な存在。実は王妃になるのを反対する方も多くいますし、家からは勘当されておりますので侯爵家にも戻れませんし今はただの平民ですわ。髪も白く、短くなりましたので印象も最悪ですわ。
知っておりますか?私は猿などと言われておりますのよ!ウキー」
と言うとルディは少しだけぶっと吹き出す。
「それはあの…何とか私が侯爵家に頼み込みシャルロッテ様を家にお戻しして…再び…シャルロッテ様がエドガー様と結ばれれば…」
「何を言っていますのかわかりませんわ?この期に及んで…失礼ながら身勝手かと…無理なものは無理ですわ」
と言うとルトレシアはしくしくと泣き始めた。めんどくさいなぁ。
「いや!あんなお城に帰るなんて!!もうあんな教育嫌なの!!思ってたのと違うもの!!私は厳しくされるのなんて嫌なの!!そう育ってきたの!!両親も周りも皆優しかったわ!愛されて当然!なのに!なんで私が虐められるの??」
と子供みたいな我儘を言い出した。
「あの…それは今だけ耐えればよろしいのでは?卒業して結婚なされば良いだけでしょう?王妃教育は今だけですのよ?ほんの少し我慢して…」
「だから!我慢が嫌なの!!私は!!私は幸せでなきゃならないの!いつだって!!苦しみや痛みを感じてはいけないのよ!!なのに!なのに!貴方がちゃんとエドガー様を捕まえておかないからよ!私なんて側妃や愛人でも良かった筈よ!」
ルディがコソリと
「側妃様でも教育は必要かとー…」
と言ったらルトレシアは
「愛人でも構わなかったと言ってるの!!勝手にエドガー様に溺愛されて私だって迷惑ですわ!!そりゃあ私がいくら可憐で可愛いくて男の方は放っておかないからって!!」
なんか物凄い娘であった。
どうしようこのままでは帰らないと言うし。するとルトレシアは
「ルドルフ様!お願いです!こうなったら実は貴方と恋人だということにしてくれませんか!?そうしたらエドガー様も諦めてくれるかと!!」
と言い出した。ルディはついに冷めた目で
「いや、無理ですね。未来の王妃様に手を出した男として俺は処刑されるだけですけど…」
と言う。当たり前である。
「そんな!!じゃあどうしたらいいのよ!人目を忍んでこちらに来たのに!!」
しかしそこで…コンコンとノックされる。
「失礼します。ルトレシア様のお迎えの方が見えております」
とザビーネさんが一人の男の人を連れてきた。たぶん王家の影か何かの人だろう。ルトレシアが一人で行動してバレないわけない。
「ひっ!!何でここがバレて!!?」
「ルトレシア様…勘弁してくださいよ…。エドガー様が必死で探しているでしょう。ご覚悟なさりませ!さあ!帰りましょう」
「嫌よ!!鞭で打たれるもの!!」
「ヒーリングすれば大丈夫です!!」
「ヒーリングなんてしてもまた打たれての繰り返しで!!」
「仕方ない!失礼!」
影の人は素早く動きドスっと腹にひと突きするとルトレシアは気絶した。影の人は抱えて頭を下げた。
「お騒がせしてすみませんでした!ここには誰も来なかったことにしておきますね」
と影の人がいいルディも
「はい、誰も来ませんでしたね」
と言った。私もうなづくと影の人はルトレシアを抱えて帰って行った。
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