第13話 来訪者
結局それからルディは何事もなかったかのような態度だ。
私も変な態度を取ったら起きていたとバレるのが嫌で普通に過ごした。
そのうちにようやく依頼が終わりギルドに戻ったフリッツからウィニーちゃんが新しい人形を送ってきた。心なしか前のより不気味だ。
「良かったですね。これで俺の部屋から出てってもらえます」
とルディは言う。言われなくても出てくわよ。と数日ぶりに自分の使用人部屋に戻った。
それから普通に過ごしていたがある日男爵家に訪問者が現れた。少し豪華な馬車が止まりあの家紋…見覚えがあるわ…。社交界でも何度か顔を合わせたことがある伯爵家の令嬢ミリア・レム・ブライトン様だ!
ピカピカな銀髪をサラリと垂らした吊り目の令嬢だ。
「ご機嫌よう!…もしかして……シャルロッテ様!!?髪を切られて分かりませんでしたわ!?平民に落とされ家から追い出されたことしか知りませんでしたがこちらで働きになられていたんですね!!お元気そうで何よりですわぁ!!」
とプリンとした胸を震わせた。ミリアはコルセットで締めた細い腰と胸を強調したワンピースドレスを着ている。
アクセサリーも使い綺麗にしており私とは全く違う。
「私夜会でルドルフ様にお会いしまして婚約者候補に名乗り出ましたのよ?お返事が来ないので直接お会いになりたくて!手紙を出しましたのよ」
と言う。ルディのヤツ…ろくに読もせず放置していたに違いない。
「……こちらの応接間でお待ちください。ルドルフ様をお呼びしてきます」
と紅茶を出しながら言うとミリアは
「よろしくお願い致しますわ!シャルロッテ様…いえ…使用人さん!」
とミリア嬢は堪えきれないと言った様子で笑いを我慢してふるふるしていた。
平民落ちの私がそんなに滑稽なのだろか。
私はルディと男爵様の執務部屋を訪ねてルディに来客が来たことを告げるとルディは嫌そうな顔をした。
「何故、留守だと言わなかったんです!全く気が利かない!」
と文句を言うが私は知らない。
「ルデ…ルドルフ様が手紙を読まないからですよ?今日訪問される予定だったとか」
と言うと男爵様も
「ルディ…お前は…全く…。折角見合い相手が乗り込んで来たのだからお相手してあげなさい!」
と言われて仕方なくルディは
「はぁぁ…わかりましたよ…」
と言い応接間に向かう。
使用人の私は紅茶の準備をした。
ソッとミリアの前に差し出すとわざとかミリアの手が私の手にぶつかりバシャンと私の服を汚した。
「あら!大変!大丈夫ですか!?使用人さん!!」
と言う。
「お気になさらずに…ひっくり返して申し訳ありませんでしたわ」
と言うとルディは立ち上がり
「大変だ!シャルロッテさん!さぁ!早く着替えに!!」
と私の手を取り部屋を出た!!
「え!?ルドルフ様!!?」
ミリアの声が聞こえた。
ルディは物置の一つに入ると
「全く陰険すぎて見ていられない!これだから陰湿な女の顔は気に食わないんだ!」
と苛ついていた。
物置を歩き回りゴソゴソと箱を開けて中から綺麗なワンピースを取り出した。
「これでも来てください!替えの服がないから!お母様の若い頃の服でもう着ないし」
と言う。
「奥様の許可がないわ!」
「俺が良いと言ってるんです!ちょっとあの令嬢に一泡吹かせませんか?シャルも言われっぱなしで悔しいでしょう?俺が演技してシャルに恋してる設定でいきましょう!」
とニヤリとした。
ええ!?
そのまま戻るとワンピースを着た私を見て目を丸くするミリア。
「まぁ!?」
と言いルディは
「すみません、使用人服が足りてなくて昔の母の服を貸しました。案外似合っていて良かった!」
とルディがなんかこっちを見てボウッとしている。ああ、演技だったわね。
「あ、あらそうですの!?それは…私失礼しましたわ!!でも髪が短いといまいちではなくて?」
と痛いとこをついてくる。
「俺は気にしませんよ。シャルロッテさん!」
うっとりと言った感じでなんか横に座らせられた。
「あ、あら!ルドルフ様!使用人を隣に座らせるなんて!!」
とひくひくするミリアにルディは
「失礼…あまりにもシャルロッテさんが可愛くて!側に座らせてしまいました!!」
「え!?」
と驚きの声を上げるミリアは
「あ、あの!学園ではお立場が逆だったはずですが…」
と言うとルディは胸に手を当て
「はい!もちろん俺の一方的な思いであり、あの頃はシャルロッテさんに片想いで…家から追放されうちの使用人になった時は嬉しかったのです!
シャルロッテさんには不便なく働いて貰っております!!」
とルディがキラキラしながら毎日充実している事をミリアに悟らせる。
心の中の声が漏れ聞こえそうで帰れ帰れと言っている。
ミリア嬢が顔を引き攣らせ
「で…ではまさか…いずれシャルロッテさんを…男爵夫人にしようとしていますの!?」
と言った。ルディは
「この想いが届けばそれも叶う日が来るかもしれません!」
と言う。ミリア嬢は私とルディを交互に見て
「シャルロッテさん…貴方…まさかそう言うつもりで平民落ちなさったの!?侯爵家とは家格が釣り合わないからってわざわざ平民落ちするなんて…王太子様をも騙してルドルフ様と…!?」
となんかミリア嬢の中で勝手な妄想が繰り広げられているようで困る。
「あの私は…」
「王太子様のことは騙してませんよ?シャルロッテさんは学園にいて王太子様がルトレシア様と仲良くされていた事もずっと我慢しておりました。先に浮気なさったのは王太子様でございます。ずっと心を痛めておいででしたよ…」
と私が言う前にルディが言った。しかしミリア嬢は
「そんな…でもそうだとしてもシャルロッテさんが魔力暴走を引き起こして王太子様に怪我をさせる所でしたわ!そんな危険な存在を貴方は受け入れると言うの!?」
グサッときた。
「魔力暴走を引き起こしたことは…王太子様とルトレシア様が口付けを交わしていたのを目撃さらたからです。ええ、俺も見ました。感情のコントロールが効かなくなり結果暴走したのです。これが何を意味するかわかりますか?
暴走するほどにシャルロッテさんは王太子様のことが好きでしたがルトレシア様に奪われました…。世間では魔力暴走を危険視していますがもしミリア様がシャルロッテさんの立場でしたらどうでしょうか?
好きな人を取られて浮気現場を目撃してしまった。一方的に世間に誤解され言い返すこともままならず…田舎に送られた…」
と言うとミリア嬢は青ざめる。
「そんな…そんなまさか!噂と違う…」
「噂は噂で真実とは違いねじ曲がっております。王太子様が婚約破棄の言い訳に魔力暴走を利用したのです。
ルトレシア様には何の罪もないように仕向けた。彼女は聖女として崇められております。誰もがルトレシア様の味方をするでしょう」
とルディは少し怖い顔をするとミリア嬢は震え立ち上がった。
「わ、私…そろそろお暇しますわ!!あ…ルドルフ様との縁談は無かったことに!!おおお幸せに!!」
とお付きの者を従いミリア嬢は馬車に乗り帰って行った。
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