第12話 看病するルディ
結局ルディの部屋でそのまま休むことになりザビーネさんがパン粥を持ってきた。
「坊ちゃんに移すんじゃないよ?早く良くなってもらわないとね…」
「は、はい…すみません」
ザビーネさんは私が食べ終わるとさっさと部屋を後にする。
そう言えば…ここに来てしばらく経ってずっと忙しくて…結局また魔力暴走して奥様の部屋は元に戻ったけど…また暴走したら…。人形が届くまで頑張らないとと思って。
私って…本当にダメね。婚約者は奪われて家族に失望され…ルディには揶揄われて…と次から次と暗い気持ちになっていく。
とりあえず寝よう。疲れてるんだ。
私は眠る。するとまた夢を見て私は使用人の格好で学園にいた。生徒達が口々に
『見て…庶民に堕ちたシャルロッテさんよ』
『恥ずかしい格好ね』
『いい気味だわ。前から王太子様には不釣り合いでしたもの』
『魔力暴走するなんて危険な存在なのよ』
『この世から早く消えて?』
などの声が私を包み、いつ間にか私は炎に囲まれており私を追い詰める。
ううう!熱い、苦しいいい、助けて!!
するとそこに誰かが桶に水を入れてバッシャンとかけ始めた。
『消火消火!!』
と一生懸命火を消して回るそいつはルディだ。
最後に私目掛けて思い切り水をかけ笑った。
『ははは!びしょ濡れです!!』
『あんたがかけたんでしょおおお!?』
と言うとルディは
『しっかりなさい!お嬢様!』
と言った。
*
「う…うう」
と目を開くとルディがいた。頭には冷たい布が乗っていた。
「ようやく目を覚ましましたか。熱でうなされて大変でしたよ?汗もたくさんかいたので途中でザビーネさんに着替えも手伝ってもらいましたよ?」
と言う。確かに寝巻きが新しくなっていた。
ルディは額に手を当てるとうなづく。
「うん、熱は下がってきたみたいですね。これ以上上がったら流石に医者を呼ぶ所だったけどなんとか大丈夫だったみたいですね!薬代が浮きましたよ」
と言い笑う。
失礼な奴だわ。ほんと。
「もう夕飯の時間ですが食べられますか?まだパン粥ですけど、後果実水です」
「食欲はあまりないの…」
と言うとルディは
「では果実水と薬湯です」
と言う。
「これは薬草から作ったもので自家製ですよ」
とルディが言い私は受け取りごくごく飲んだ。喉が渇いていたから。
果実水も冷たくおいしかった。
私は弱っていたので思ってもないことを言った。
「あ…りがとう…ルディ」
そう言うとルディが目を丸くして
「うわあっ!!シャルがお礼言った!言えたんだ!!人に!!」
と言う。失礼なと思ったけど今は弱っていたので中々言い返せずに弱みを言う。夢のせいだろうか。
「ごめんなさい…私ごめんなさい…」
と涙ながらに言う。まだ少し混乱している。
ルディが流石に困惑して
「貴方らしくもない。病気になるとしおらしいのは良いけどもうちょっと人に頼ってもいいんですよ?ずっと気を張って疲れたでしょ?」
と頭を撫でられたのでなんだか眼頭が熱くなる。ずっと優しくしてもらえなかったから。弟のシルビオが産まれてから両親は私より後継となるシルビオばかりよく可愛がり私には厳しい王妃教育をさせて私は頑張った。
泣くことも許されなかったから常に上を向き虚勢を張って生きてきた。
王太子エドガー様は小さい頃は私とも遊んでくれたけど一度…犬に噛まれそうになったエドガー様を助ける為犬に威嚇して魔力を少し暴走しかけた。
その時の私の怖い顔を見て引いたのかそれからあまり遊んでくれなくなったり距離を置かれることが多くなった。
そして学園では堂々と浮気され後はこの通り惨めな結末となった。
ここに来るまで馬車の中で散々泣いておいたのに…またまやみっともなく弱り泣いた。
ルディは優しく涙をハンカチで拭うと私を寝かせて額にキスし
「ほらもう、お眠りなさい。安心して。もう怖いものはない」
と言い安心したけど、ルディが立ち上がり行こうとしたのがなんだか寂しくなりつい服の端を持ってしまう。
「ん?なんですか?」
「うっ…ね、眠るまでいてよ」
と言うとルディが驚き少しだけ赤くなったように見えた。
「し…仕方ありませんね。病気で不安になってますね?」
「………」
ルディは側に座りそろそろと私の手を握る。
「昔祖母がこうしてくれたら私もぐっすり眠れて…だから…深い意味はないですから!」
と慌てるルディ。
私は落ち着き眠気に襲われて眠った。それからは嫌な夢も見ずに深く眠ることができた。
目が覚めるとルディは私と手を握ったまま隣で寝ていた。
すやすやと寝息が近くで聞こえ私はどきどきした。
起こそうと思ったけどあんまり気持ちよさそうに寝ているし…い、いつもソファーで寝かせているから久しぶりのベッドが気持ちよかったのかな?
ルディの手が大きくて暖かい。
するとルディが
「うーん」
と言い起きそうだったので慌てて目を閉じて寝てるフリをした。
ルディは起き上がると手を離した。
ホッとしていると額に手を置かれ
「熱は下がってるな良かった」
と言った。布団を直し今度こそ出て行く気配がした。
しかし戻ってきた。
??
なんかじっとしてるのかな?さっさと行きなさいよと思ってると急に何かが唇に触れた。
え?
は?
あれ?これ…
まさか私…またルディにキスされてますか!!!??
ゆっくり離れるとルディは慌てたようにバタバタと扉から出ていった。
ええええええ!!!
私は真っ赤になり動けずにいた。
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