第11話 連続悪夢

 魔力暴走防止の為、人形が来るまでルディと同じ部屋で過ごす事になる。


「いいですか?絶対に腹を立てない事!」

 と念押しされる。


「わかってるわよ!私だって」


「あれもう不機嫌じゃ無いですか?」

 と言われる。そりゃそうだ。

 私は冷静にと頭に思い浮かべ


「あんまり話しかけないで、あんたの顔見てるとムカつくわ」


「えっ!?酷い…。そこそこいい顔の俺を!」

 と言うが別に反省してない様だ。


「また襲われたら敵わないわ。こっちからこっち…入ってこないで」

 と部屋の真ん中に紐で線の区切りを作る。


「ちょっと待った!ベッド!俺はどこで寝ればいいんです?」

 区切りの奥のベッドを見てルディが嘆くが


「そっちにはソファーがあるじゃない?」


「いや、普通は主人の俺がベッドを使うに決まってるでしょ?元々俺のだし」

 と言う。


「レディにソファーで寝かす気なの?」


「だって使用人だし普通は遠慮してそっちがソファーで寝るでしょう?もしかして常識が通用してない!?」

 と言うルディ。

 ムスっとするが怒ってはダメだ。また暴走してしまったらダメ。


「はいはい、わかったわよ!じゃあ私はソファーで寝れば良いのね?それでいい?」

 とベッドを譲ろうとすると


「もういいですよ。俺がソファーで寝ますから。シャルはそのままで」

 と言いルディはソファーに腰掛ける。

 最初からそう言えばいいのに!


「フリッツの奴と連絡付くのはいつぐらいかかりますかねぇ。はぁ」

 とため息を吐く。

 ギルドに戻って直ぐに依頼に出かけてしまったら戻るまで時間かかるかも。それまで耐えなくちゃね。私は自分の部屋から持ってきた鉢植えに水をやる。


 戻ってきたばかりのルディは馬車旅で疲れていたのかソファーに横になると直ぐに深い眠りに落ちたようだ。

 ルディの寝顔なんか初めて見たわ。

 眠ってると静かでいいわね。

 私もとりあえずルディのベッドで眠る。留守の間も私が綺麗にしておいたので大丈夫だ。


 *

 夢を見た。

 真っ暗な中に赤い炎が燃えており私はそれに近づくと炎が大きくなり私自身を包み込んだ!


 いやっ!燃える!!炎を纏い逃げる私。楽しそうに笑いながら仲良くしている王太子エドガー様とルトレシア伯爵令嬢がいた。

 私を見ると二人とも化け物に会ったかのような目で見てルトレシアが手を翳し


「悪魔よ、浄化せよ!!」

 と言い私に向かい呪文を唱え出す。やめて…。

 私悪魔じゃ無いわ。やめてよ!違うの!

 私は私は!


 するとユサユサと誰かが揺さぶる!


「シャル!!起きろ!!」

 パチンと頰に少し痛み。

 ハッとするとルディが目の前にいて焦った様に言う。


「ルディ?」

 と言うとホッとしてルディは


「全く…深夜にうなされて汗が出てますよ!」

 と濡らした布を渡す。


「……私…あれは夢…」


「怖い夢を見たんでしょうね。眠りながら暴走されちゃかないません」

 と言い、ルディはさっさとソファーに戻り横になった。頭から毛布を被った。

 その隙に私は布で汗を拭いて着替えてまた眠りにつくがさっきの夢が怖くて中々眠れなかった。


 いつか私はルトレシアに…。

 そう思うと震える。

 夜明け前には台所に降りて支度を手伝った。

 ザビーネさんが私を見て


「どうしたんだい?酷い顔色だね?まぁ、キリキリ働きな!!」

 と背中をバンと叩かれる。

 私はよろけたが


「しっかりしなくちゃ」

 と呟き仕事に集中すると次第に夢のことは忘れてしまった。


 しかしその晩また私は悪夢を見た。


 お父様とお母様と弟のシルビオが私を罵倒する。


「この役立たずの娘が!」

「産むんじゃなかった!」

「生きてる意味あるの?」

 そう蔑み私を睨む。手には私に似た人形を持っている。シルビオはそれを切り刻み、お父様は靴で踏みつけ、お母様は火を付けた。

 私の身体が炎に包まれる。


 あああ…やめてよ…そんな…。

 やめて!!


「やめ…やめてーーー!!」

 バシっ!!

 と頰が痛み私は目を覚ました。

 昨日と同じ様にルディがいた。


「……またですか?大丈夫ですか?お水を飲みますか?」

 と水を入れたコップと布を渡される。

 ルディは


「酷い顔色に汗ですよ」

 と言い額に手を当てる。


「少し熱があるようです…」

 と言う。そう言えばボーッとする。


「……何で…私が…」

 と言う私にルディは


「シャル?また悪夢を見たんですか?」

 と聞く。


「わ…私…私が燃やされる…」

 と言うとルディは詳しく夢の内容を聞いてくる。

 震えながらも答えて行くとルディは


「二日とも燃やされる夢?」


「そう…」

 ルディはいつの間にかベッドに座り私の背中をさすっていた。


「大丈夫ですよ。ただの夢です。いろいろあったから疲れたりしてるんですよ。明日は仕事を休んでいいですよ」


「え…でも」


「熱があると言ったでしょ?病気を移されても困るからしっかり治すことです!いいですね!?」

 とルディか言い、私は初めてお休みをもらい休養することになった。

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