第10話 修復魔法

 それからルディ達が帰るまで出来る限り修復を試みたがやはり無理だった。賊達は次の朝に村の自警団を呼び出して事情聴取を行った。


 2日後にルディ達が帰ってきたので私は部屋で震えていた。ここも追い出される。


 荷造りは済ませたしいつでも出ていける。

 するとバンと乱暴に扉が開かれルディが入ってきた!


「シャル!!無事で!?」

 と血相変えてやってきたルディが言う。私は青ざめた。


「あ、あの…ルディ…。私その…ごめんなさい…なんとか賊は捕まえられたんだけどジュディス奥様の部屋がその…めちゃめちゃになって……もももちろん出て行く準備はできてるわよ?…ごめんなさい」

 と言うとルディは


「…話はザビーネさんから少し聞いてきました…。怪我はないですね。良かった」


「?いや…私より盗賊達の怪我の方が酷いわ」

 何せ壁にめり込んだり天井に当たり落ちたりどこか確実に折れているだろう。


「…そのようですね。まだ俺はお母様の部屋を確認してないですが…」

 とルディは言い荷物を蹴飛ばした。


「ああっ!ちょっと何すんの!?」

 それとも荷物など必要ないと!?

 するとルディが言う。


「勝手に出て行かれては困りますよ!」


「……憲兵に突き出して牢獄に入れるから?」

 と言うとルディは


「そんなことしませんよ。今まで通りうちで働いて貰いますから」

 と言った。


「う、嘘?追い出したり牢屋に入らなくて良いの?私また暴走したのよ!?」

 と言うとルディは


「うるさいですねえ。出て行く必要はないと言ってるでしょう?また口塞がれたいですか?」

 と言うのでげっと思い口を手で隠す。ここここのキス魔!!


「とにかくもっと詳しい事情聞きますよ」

 と私はとりあえず男爵様達の元に行き謝りながら事情を説明するとなんとジュディス奥様は私を抱きしめて


「一人で怖かったでしょう?それに暴走したとは言え無事で良かったわ!」

 と言うので


「あ、はい…奥様の金品などは幸いに無事で…」

 と言うと


「バカね。貴方の方よ」

 と困ったように笑った。

 え、私?私が無事で良かったって言ってるの?ルディの方を見るとこっちも困った様にしていた。


「奥様…ごめんなさい!!」

 私はしがみ付き泣いた。

 怪我をした盗賊達はその後憲兵に引き渡した。奥様の部屋は改装する事になった。


 この事件を聞きつけたフリッツとウィニーちゃんが戻ってきた。フリッツにべったり張り付いて離れないウィニーちゃんはやはり大人に化ていた。


 ウィニーちゃんは


「それならウィニーが直してあげるよ、修復魔法でしょ?」

 と言う。


「でも修復魔法だけじゃこんなにボロボロになってちゃ無理だって…」

 とフリッツが言うがウィニーちゃんは大きな胸を揺らし


「大丈夫だもん!ウィニーできるもん!!魔女歴舐めんなよぉ!」

 と言い、何か呪文を唱え始めた。シュルシュルと姿が子供になり30分経った時に修復魔法が発動し部屋の中の物がガタガタと揺れてめちゃくちゃになった部屋が元に戻り始めた。

 抉れた床や吹き飛んだ窓枠も元通りに綺麗になっていく。


 凄い…。完璧な修復魔法だわ!!

 ついに元通りになると皆が拍手した。フリッツはウィニーちゃんの頭を撫でて


「やるじゃん!ウィニー!!凄えよ!」

 と言うとウィニーちゃんはポッと赤くなり


「ウィニーできるやつだもんね!!…フリッツ様結婚して!!」

 と言うとフリッツは


「それは断る!」

 と言ってウィニーちゃんはギャン泣きした。

 ジュディス様も喜び


「まぁ!本当に凄い魔女さんなのねぇ!頼もしいわ!!」

 と言い、ウィニーちゃんに飴玉を渡していた。

 ダニーロ男爵様も小さくなったウィニーちゃんに高い高いをしてやり子供扱いしていた。


「部屋も元に戻ったのに何暗い顔してるんですか?いつまでも鬱陶しいですよ?シャル?」

 と憎まれ口を叩くルディ。


「…私の事危険な存在だから縛っておかないの?」

 と言うとルディは


「働くのに邪魔でしょう?縛ってほしい変態思考ならそうしますけど」


「そんなわけないでしょ!?」

 グギギギ!こいつやっぱり腹立つ元執事ね!!


「それより…ルディ!お前…夜会でいい娘さんはできなかったのか?言い寄ってくる者はいたろう?」

 とダニーロ男爵が言うと


「はあ?皆俺をフリッツと間違えて話しかけてましたけどぉ??全く迷惑ですよ!フリッツ!戻ったんだから後を…」

 と言うとフリッツは


「お、俺そろそろ依頼の方に戻らないとなー!お母様の部屋も綺麗になったし良かったじゃん!!じゃあねーーー!!!」

 とフリッツはダッシュで去って行く。追いかけるウィニーちゃん。


「ちっ!また逃げられた!」

 と悔しがるルディにダニーロ男爵は肩に手を置きボソボソと何かをしゃべっていてそれにルディが


「いやいやいや!そんな!お父様!俺は別に!!」

 とチラッと私の方を見る。何?悪口かしら?

 と思ったけどダニーロ男爵が言う。


「シャルロッテさん、部屋は元通りになったし盗賊も捕まったからからそう咎めないが…君にはまだ魔力のコントロールが出来ていない。とりあえずの軽い罰として今日からルディの部屋でしばらく眠っておくれ。ルディが監視役となる」

 と言う。


「えっ!!!?」

 流石にそんな!


「お父様…別にそんなことしなくてもいいでしょう?」


「見てみなさい…これを」

 とダニーロ男爵が拾い上げたのはあの魔力を吸い取る人形だが頭が破裂していた。


「あっ!!」


「さっきウィニーちゃんに直してもらおうかと思ってたけどさっさとフリッツを追いかけて帰って行ってしまった。また連絡はするが新しい人形が送られてくるまではルディの側からあまり離れないように!君を羽交締めにできるのはルディだけだと聞いておる」

 と言う。くっっ!私のバカ!!


 ルディは仕方ないと言った様子だ。

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