第5話 魔力コントロールできそう?

 男爵家の朝ご飯が済むと主人達の皿を片付け私はようやく朝食を少し食べる。侯爵家で出た朝ごはんと違い使用人のご飯だ。主に残り物余り物。

 その後は洗濯をして主人の部屋掃除、家の掃除だ。

 昼食の準備や庭の草むしりとあんまりのんびりする暇はない。

 ルディの嘘つきーー!!

 こき使われてるだけ!!

 ああっ!あの時魔力暴走さえしなかったら!!キスくらい見逃してれば私は優雅なお嬢様だったのに…。


 そもそも私悪くないわよ、浮気して婚約破棄狙ってた王子や婚約者いるのに無視して王子の誘いに乗ったルトリシアも悪いと思うけど、ルトリシアは聖女だから許される……って何なの??


 …まぁ。もう田舎のここにいる時点で私は負け人生なのよ。はぁ。虚しいわね。毎日家事手伝いで綺麗な爪さえボロボロ。指も怪我。

 情けない。


「おや?浮かない顔ですね!シャル!!」

 そこへ面白がってるような元執事ルディが現れる。双子の兄フリッツも一緒だ。

 フリッツはボロボロとクッキーを齧り床にカスをこぼしていた。


「ちょっと!食べ歩きとかやめてくださらない!?」

 と掃除の手間が増える事を言うとフリッツは


「ん?ごめんー!」

 と自分で箒を取り片付けた。


「……シャルロッテさんもいる?」

 と食べかけのを差し出される。ルディは


「フリッツ…行儀悪いですよ」

 と困った顔をして止めた。


「なんだよ?ルディの癖にちょっと奉公先の侯爵家で行儀が良くなったからってさ。その喋り方キモいんだよ!」

 と言う。


「は?仕方ないでしょう?俺は侯爵家で働いてたんですから!フリッツこそ男爵家の跡取りとしてしっかりしなさい」

 と言うとフリッツは膨れた。


「は?お前がなれよ!跡取りなんか俺はやらねえ!冒険者になるし!ここから出るし!」


「まだそんな事…」

 とルディは呆れる。


「いや、本気だし父さんと母さんだって同じ顔なんだからどっちが継いでも問題ねえって言ってたろ?それにルディだってなんで侯爵家に帰らないんだよ?しばらく様子見か?シャルロッテさんの?」

 するとルディは言葉に詰まる。そういやこいつ何で侯爵家に戻らないんだろ??私の監視役としてしばらくいるのかしら?


「そりゃ…誰か必要ですから…と旦那様に言われて…その…またお嬢…シャルが魔力暴走しないかとか…どっかに逃走しないかとか」


「やっぱり監視役じゃないの!!」


「…実際感情のコントロール下手くそな癖に!この前も魔力暴走仕掛けた!短気は損です!シャル!」

 と言われる。確かに…。


「惜しいなぁ!魔力コントロールさえ出来てりゃ俺と一緒に冒険者やる道もあるのになぁ?」


「「は?」」

 ルディとハモる。


「何で私がフリッツ…様と冒険者になるのよ?」

 と言うとルディも


「そうですよ?シャルは家政婦としてこの家にいるんですから!」

 と言うとフリッツは


「だって!元貴族で馬鹿みたいに魔力あってそれを有効活用しないなんて人生勿体なくね?俺なら直ぐ冒険者になるぜ!!てことでルディはここの跡継ぎね?」

 と言ってくる。


「魔力コントロールできないなら冒険者になっても仲間を巻き込んで殺すかもしれないでしょ?」

 とルディが失礼な事を言う!

 いや…そうかもしんないけど!!


「だったら魔力コントロール覚えさせりゃ良いじゃん!!」

 とフリッツは言うが


「あのね…フリッツ…様。私だって今まで散々怒らないようにして来たの。でもダメだった。ちょっとした短気で魔力が溢れて抑えが効かなくなる。いつ、物を壊したり人に被害出るか分からない。訓練だってしようとしたわ。


 でも…結局ダメ。上手くコントロールはできなかった!」


「ふうん?でもコントロールしとかないとシャルロッテさんが怒る度物壊れたりして勝手に落ち込まれてもこっちも困るよ。迷惑だな!」

 とハッキリ言うフリッツ。

 ググギギギ!人が気にしてる事ををををを!

 流石双子だわ!憎ったらしい!!


 ブワっと魔力が溢れ近くの帽子立てが揺れてルディがまた私を羽交締めにした!!


「こら!シャル落ち着いてください!!フリッツも煽ってんじゃないですよ!!男爵家の屋根吹っ飛ばされたいのですか!?」

 と言う。


「へーへー…こんな事くらいで暴走されちゃたまんねえ!やっぱりコントロール覚えようよ!」


「だから…そんなの無理で…」


「コントロールできたらあんたの浮気した婚約者とかに復讐できるかもよ?」

 と言う。


「復讐って…物騒な!相手がどなたか分かってます?この国の王太子よ?バカなの?死刑になるわよ!」

 と言うとフリッツは


「王太子に振られたのか…可哀想過ぎる…。それほど相手の子魅力的だったの?」


「まぁ…誰から見ても可愛くて女の子らしい子でしたよね。何と言うか見てて守りたくなる系の」

 とルディまで相槌を打つ。


「成る程!シャルロッテさんは綺麗な猿だけど短気だしなんか近寄りがたい雰囲気はあるもんねー!私に近づいたら殺すみたいな?」

 は?私って他人から見たらそんな感じだったの?がーん!ちょっとショックなんですけど!!


 確かにクラスメイト達は結構遠慮がちに話しかけてきた。私の魔力が怖いから怒らせないようにと思っていたけど…印象やイメージで怖がられてたの!?


「…はぁ。フリッツ!またシャルが落ち込んだでしょ?魔力コントロールって難しいんですよ?特にシャルみたいに膨大な魔力持て余してる人はね」


「…でもやっぱり勿体無いよ!…あ!そうだ!良い事思い付いた!俺そう言えばいい魔女知ってるよーー!その魔女さん連れてくるから魔力コントロールできる薬か魔法かけてもらいなよ!!」

 とフリッツは言う。


「そんな人どこで知り合ったんです?」

 とルディが聞くと…フリッツは


「村の友達と狩に行った時魔物が出て死にそうになったところをその魔女さんが助けてくれたんだ!人嫌いで森外れに住んでんだ!!」

 と言う。


「人嫌いならわざわざここまで来ないんじゃない?」

 と言うとフリッツは笑い出す。


「クックックッ…いや俺が頼めば何とかなると思うよ?その魔女さんさぁ…明らかに俺に気がある!」

 と胸をドンと叩いた。ルディと二人して呆れる。


「凄い自信ですね。フリッツの勘違いでは?」

 と言うとフリッツは


「は?何を言う兄弟!お前俺と同じ顔の癖して!俺たちがモテないと本気で思ってるのか?そこらの底辺村男顔でもないだろ!?王太子さんには負けるかもしれないがそこそこの顔の良さに生まれた事を讃えよ!!」

 と言うとルディも


「ふうむ…確かにそれは…言えてるかもしれないですね!!俺たちそこそこは顔がいいので!!」

 と言う。


「あんた達…ばっかじゃないの?そこそこって何なのよ?」

 まぁそこそこと言うのは確かに思うけど。そこそこね。


「うるさいなぁ!ともかく俺の頼みなら聞いてくれるさ!!明日連れてくるから待ってろよ!!」

 とフリッツは指差してニヤリと言う。

 なんかその魔女さんが可哀想。と私は思った。



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