第4話 ルディを起こす役
自分の部屋の掃除が終わりぐったりした。まさか掃除がこんなに疲れるものだったなんて。
初日から自分の部屋を与えられた私。当然ながら侯爵家の自室とは違い狭く、ベッドと机とキャビネット、小窓くらいしかなく寂しい一室だ。掃除はあまりされてなく床には埃で箒でゴミを集めてベッドの布団を干し机を拭いたり壁を拭いたり床を水拭きして乾かし…とゴシゴシと磨いた。
だから初日はぐっすり疲れて眠った。
次の日にザビーネさんに叩き起こされ朝の3時で
「ちょっと早くない?」
と聞くと
「使用人の朝は早いのよ!主人達より早く起きて馬の餌やりや朝食の手伝い、主人を起こしたりとね!!
わかったら早く支度してきなさい!!」
と怒られて眠い目を擦り支度する。
「シャルロッテさん!とりあえす馬舎に行きますよ!餌の人参を切ったものがこれね!」
とボウルを渡されて井戸で水を汲み…馬舎に着くと4頭程の馬がいた。
チェカ、ミウ、ログ、ブライアン
だそうだ。
細長い餌入れにそれぞれの餌を入れ水も 入れる。ザビーネさんは糞の始末と藁の掃除だ。
腰をトントンしている。
食べ終わると馬のブラッシングを二人で分けてした。
それから朝食の準備。一応料理人らしき寡黙な男サムエルが頭を下げてザビーネさんは始めは野菜の皮むきと言われて芋の皮むきをさせられる。
当然そんなことしたことないから私はナイフで指を少し切ったりしてボロボロで惨めだった。
料理の味見は嬉しかったが食卓のテーブルに料理を並べる作業も地味に大変だ。
綺麗にセットできた頃にはもう陽が昇る。
ザビーネさんは時間を見て私に
「貴方は坊っちゃまを起こしてきなさい」
と水に濡らした布を何本も用意してルディの服を渡された。
「!?まさか!着替えさせるの!?」
と驚くと首を振り
「それは7歳までのことです。大きくなってからはご自分で着替えるよう私が躾ました!」
と言うから驚く。ルディの子供の頃泣きながら着替えてた光景が浮かんだ。
「兎に角坊ちゃんを起こすのが貴方の役目ですよ!」
と言われ侯爵家にいた頃はルディがカーテンを開け私を起こしてくれたのにな。もうあの頃は戻らず私が今度はルディを起こす番だなんて…。
田舎に来たけどのんびりする暇もないわ。
それから部屋をノックして入るとルディはスヤスヤと私より少しいいベッドで眠っている。
くっ!憎たらしい!!
ゲシっとベッドの足を蹴ると
「うーん、むにゃ…」
と寝返りした!!くっそー!
「ルドルフ様!起きなさい!!バーカ!」
と言ってやると寝ぼけたルディが私を引き寄せ私は体制を崩してベッドに倒れルディの抱き枕になった!ぎゅむと締められ苦しい!
「おいこら!ルディ!離しなさい!無礼者!!起きなさい!!」
とポカポカするとルディはパチリと目を開けニヤリとした。
えっ!?
こここここいつまさか!起きてたの!?最初から!??
「クックックッ!おかしい!!シャル!不合格!こんな起こし方じゃいけませんよ?私がシャルを起こす時を参考にしなかったのですね!」
と言われる。くっ!!
ルディは確かに起こす時は優しく揺り起こした。
「うるさいわね!起きてるならさっさと支度しなさいよ!ばか!」
と言うとムニっと頰を掴まれ変な顔にさせられた!!
「雇い主になんて口を叩くのです?シャルはまだお嬢様のつもりですか?図々しいですよぉ?」
と言われる。くっ、屈辱だわ!
私は慣れないことに頑張って早起きしたのに!!
思わず苛つくとルディはニッコリして
「すみません。初めてですもんね。こんな簡単なことも出来なくて当然ですよ。よく出来ましたねー」
と子供のように頭を撫でてバカにしてきた。
手を払い起き上がりズイっと布と服を渡して
「朝食の準備が整っておりますからどうぞ!!」
と私が言うとクックックッとまだ笑いをこらえていた。
「はいはい、着替えるから一旦部屋の外で待機ね」
と言われ部屋の外でしばらく待つとルディが入っていいと言う。開けて入るとルディはやはりキッチリとシャツを着こなしていた。
いつもなら執事服で手袋を嵌めてるけどもうそんな風でなかった。ルディは手招きして櫛を渡して
「では俺の髪をセットしてもらおうかな!」
と言う。なっ!私が何でそんなこと!
と思ったが私は使用人であるし雇い主に逆らえず
「グギギ!畏まりました!!」
と言うしかない。
紺色の髪に櫛を入れていく。てか男なんだからこんなのさっと自分でできそうなのに!!
最後に正面に周りいつもの左分けの前髪にしてやった。
近くでジッとスカイブルーの目と合った。
ルディはニコっとして…また私の頭をペットみたいに撫で
「よく出来ました!!シャル!凄い凄い!」
と褒めた。いや誰にでもできることを褒めて逆にバカにしている!きいいいい!この性悪男おおお!
魔力がブワっとしたのでルディは慌てて
「おっと!!」
といつものように私を羽交締めした!!
「俺の部屋で暴走して穴でも開けられたりしたら大変だ!!どーどー!シャル!」
「私は馬か!!」
とゴンと頭でルディの顔面を殴ると痛がった。ざまあ!!
「…こんな事をしたらクビになると言うのに…はぁ…」
とルディはため息。
「あら?ごめんなさい?」
とようやく落ち着いてニヤリとする。
しかしルディは私が指にたくさん布を巻いていたので(さっき慣れない包丁で怪我した)それを見て
「大丈夫ですか?」
と一応心配した。
「ふん!まだ慣れてないだけ!!」
と言うとクスクス笑いながら
「それもそうですね!皮むきとかやった事ないでしょうね!早く慣れないとね!」
と言われる。
何よバカにして!
「…そう言えばフリッツ…様は起こさなくていいのかしら?」
と言うとルディは
「フリッツ?あいつはいいですよ。俺より寝相悪くて蹴られますよ」
と言いゲッとした。
するとルディは私のおでこに指を置きピンと弾く。
「シャルは俺だけ起こしに来ればいい」
とニコリと笑われた。少しだけドキっとしたのは気のせい。
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