君は異端。私は英雄。

青いバック

私は英雄

 世界は広い。広すぎて自分の世界が小さすぎると思えるほどに。


 世界が小さければいざこざもなくて、ずっと平穏に好きな人と、喋って、笑って、キスして、手繋いで一生を過ごせたのかもしれない。


 人を殺したら英雄の世界になってしまったのはどうしてなんだろう。前は人を殺したら冷たい目で見られてた。なのに、今は熱い視線を送られ期待を背負わされる。


 異端が普通になって、普通が異端になった世界。まるで、鏡の中に身を投げ打ったようだ。


「……君は英雄になれたの? それとも、異端だったの?」


 私は冷たくなった君を膝に乗せながら聞く。答えが返ってくることは無い。冷たく、穏やかな顔をしてこの世を去ってしまった君。


 涙がこぼれそうになるけど、君が私の泣き顔は嫌いだ、と言っていた。


 そして、「お前を泣かせるやつは俺がやっつける」とも言ってくれた。なら、君は君をやっつけてしまうの?


「答えてよ。笑って。好きって言って。ねえ、君は……君は異端でいてくれたの?」


 君は英雄じゃなくていい。異端であってほしい、この世界で君が英雄扱いされなくても私の中では、君は凄い英雄なんだよ。大きすぎて眩しすぎて直視できないほどに。


「……私は英雄だね」

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