中3編  田中家

 田中家は父母、祖父祖母、兄、姉、本人、妹

 と言う家族構成である。


 この家庭ではすでに兄姉は、社会人になり妹は小学生、兄は一人暮らしを始め姉はまだ家にいる。

 父親は自営業をし、母親は夜の弁当屋の仕事をしている。田中本人は幼い頃から祖父母、主に祖父に育てられていた。

 祖父はとても優しかった。足があまり良く無かったが虫取りに連れて行ってくれたり、魚釣りに行ったり、オモチャが壊れればそれを修理してくれた。

 寝る時も一緒で暑くて蹴った毛布をかけてくれたりお腹が痛ければお腹を撫でてくれる。


 小学2年生の時姉と喧嘩をした。手を出してしまった。

 いつも優しい祖父が、激怒した。


 祖父『女に手を出すなんて、最低だ。そんな事は、あってはならない、嫌がる事をするな。』


 僕は何も返す言葉が無かった。

 自分が悪い事を完全に理解しているから何も言い返せなかった。

 その日から女の人と話す時はいつも怖かった。

 何か失敗があるのでは無いか、自分の発言で嫌がったり傷つけてはいないか、そう考えながら話すようになった。


 祖父『よしくんは優しいんだから、優しいところを伸ばせばいいよ。』


 僕は祖父が大好きで何をする時も一緒にいた。

 いつもあまやかしてくれた。そんな祖父の怒った姿を今も思い出す。



 父は仕事が忙しい、母は妹の事で手一杯、そんな僕がいつでも甘えられる存在が祖父だった。



 姉『よしくん?何ボーッとしてんの?』

『好きな人でもできたの?眉毛ぐらい整えなよね。本当中学も高校もすぐ終わるから頑張んなよ。』よしくんは家族の中でのあだ名である。


 田中『好きな人?居ないけど何か?眉毛は部活でいじるの禁止なんだよ!!』


 姉『どぉーせ去年年賀状出してた。あの子じゃ無いの高美さんだっけ?可愛い子だよね。可愛い子はすぐ彼氏できちゃうよ笑』


 ナチュラルに姉に当てられドキッとする。


 田中『何でそう思った?』


 姉『だってあの子のやつだけメッチャ字を綺麗に書いてたから。よしくん字汚いじゃん笑』


 田中『ふーーんそう1番最初に書いたから集中してたんじゃない。』


 姉『そうなの。へぇー。あの子も年賀状に友達とのプリクラを乗せるってなかなか攻めてるよね!!』


 田中『別にそうしたかっただけだろ。それに攻めてる意味がわからん笑』


 姉『まぁーいいやテレビ今日見たいのあるからチャンネル私使うから』


 田中『どーぞ。』


 姉は何を考えて居るか分からないが何故か楽しそうな顔で席を立った。

 田中はあまり深く考えずにご飯を黙々と食べた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る