嘘の裏側

 本稿はハルコという19歳の女性が失踪した事件をリズが取材して集めた関係者の証言集です。なおリズは不慮の事故で亡くなられました。ここにご冥福をお祈りします。

 編者


 イーライ(ハルコの同級生)

 ええ、彼女は良い子でしたよ。わたしはボランティアであちこちに行くのですが、よく手伝ってくれました。彼女はわたしが感謝するたびに

「私はあなたのお手伝いができて嬉しいです」

 って。そういう子でしたよ。ええ、とても良い娘でした。だから今でも信じられないんです。彼女が行方不明だなんて……。


 リサ(ハルコの同級生)

 ええ、あの子がいなくなるなんて、今でも信じられないわ。

 彼女はとてもやな女で、例えばわたしの彼を寝取ったのよ。それを問いただすと彼女はこう言ったわ。

「ただわたしは彼に好意を持っていただけよ。それにあなたが彼になびかなかったのが悪いのよ」

 って。それで彼は彼女とすぐ別れたんだけど、まあ身体だけの関係なんでしょうね。


 エド(ボランティア先の同僚)

 ええ、ハルコのことですね。ええと、彼女とは〇〇難民キャンプで出会いました。

 ホントに良い子でね、よく

「子どもたちのために頑張らなくっちゃね」

 って言うんですよ。事件のことは本当に悲しいです。彼女とは一番仲が良かったんです。彼女の失踪が報じられた時、私は泣いてしまいましたよ。とても残念で仕方ありません。


 ウィラード氏(ハルコの通っていたニューラグーン大学の講師)

 ええ、ボランティアを紹介したのは私です。かの地の窮状をきいて是非にと。確かに彼女は良くやってくれました。しかしまさか彼女が……。

 彼女との関係ですか?たしかにハルコにはいろいろ、まあそういうウワサがありました。しかし、誓っても良いですが、私とはそういう関係にはありません。でも、彼女はいつも私を、そういう揶揄いをして困らせていました

 ええ、ハルコの失踪については警察にも証言しましたし、学校関係者にも話はしました。ただそのときは突発的な家出ではないかと言われたんです。

 ……それで思い出したんですが、彼女は良くこう言ってたんです。

「私は自分で思っているより、ずっと運が悪いから」と。


 ヒナタ(ハルコの姉)

 確か、あの子がいなくなる何日か前です。

 妹は怯えていました。

 わたしが

「どうしたの?」

 と、聞くと

「あいつが怖いの」

 と、返しました。あいつとは彼女が言ってるボランティアの知り合いです。

「表面は優しいんだけど、たまに冷たい目をするのよ。まるで私達を見下してるみたいに」

「考え過ぎよ。あの人はそんな人じゃないわ」

 そう返したのですが、妹の怯えは消えませんでした。そして妹が行方不明になったのです。わたしは必死に探しましたが見つかりませんでした。妹は自殺したという噂も流れました。でもわたしには信じられません。何か事件に巻き込まれたとしかおもえない……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る