追憶のカケラ

「そうしてつらつらと考えたあげく、わたしはついに理解したと思ったのです。つまり、モンタージュとは生の復活なのだと」

ー作家・映画監督NCDのインタビューより


 1月15日

 少女は狙撃銃の照準から車がやって来るのを見る。

 車から数人の軍人が出てきた。

 1番偉そうな男に照準を定め、引き金を引く。

 プシュッ

 と音を立てながら弾丸が発射される。

 その弾丸を少女は確認せずにまた1発撃ち込む。

 2発の弾丸は軍人の眉間に突き刺さり、男は倒れる。それを確認する前に次のターゲットを探す。

 スコープの中で動く影を見つけ、すぐに引き金を引いた。

 3人出てきた内の真ん中の男に命中させることが出来たようだ。2人の軍人も仲間がやられた事に気づいたらしく、ライフルを構えるとこちらに向けてきた。

「くそっ」

 少女は毒づくと、狙撃銃を片付けて素早く退散。

 軍人たちが弾丸の軌道から彼女がいた位置に来たときには、誰もいなかった。


「戦争なんてくだらないにゃ。平和が恋しいにゃ」


「なーに、この程度の距離なら、私に任せてよ」


「息を呑むほど、見事だったよ」


 1月16日

「よう聞いたか?」

「なにを?」

 国境用の検問所で警備隊が2名が雑談している。2名とも警備隊員ではあるが国境警備は退屈であり、 話し相手がいれば話題はつきないものだ。

 だがその会話はすぐに途切れた。

 目の前を1台の荷馬車が通過していく。

 荷台には幌がかかっていて中身まではわからない。

(ん?)

 通過していく荷馬車の中に、1名のやせ細った少年が乗っていた。年の頃なら10代半ばといったところだろう。

(珍しいこともあるものだ)

 2人はそう思いながら少年の姿を見送り、そしてすぐに興味を失ったかのように自分たちの仕事へと戻って行った。


「この子どもたちは、故郷も知りませんし、故郷の言葉も十分使えないのです」


「これでは、かれらは透明人間じゃないか」


「ちゃんとお代をいただけるなら、わたしたちは種族も宗教も、世間の評判さえ一向に気にいたしませんよ」


 1月20日

「はあ、誘拐事件ですか?」

「ああ、しかも老若男女問わずだ」

 スーツ姿の男にカウボーイ姿の上司が返す。

 ここ最近、紛争に紛れて何者かが人身売買目的であろう犯罪が行なわれているという。

「で、当局に相談したら、キミが来たわけだ。大丈夫かね?」

「ええ、任せてください」

 肩をすくめるスーツに上司は続ける。

「じゃあ、任せたよ、ええと」

「ヒエロニムスです。皆はハリーとかロムとか呼んでますがね」


「ボクが言える1番重要にゃことはにゃんだろう?」


「その件については、答える必要はない。われわれは、かれらについて答える義務も

ない」


「ええ、これだけ頑張っていても、かれやかの女たちは救えなかったのです」


 同日正午。

 詰所で兵士が2人喋っている。

「おい!聞いたか?」

「何がだよ」

「昨日の話だ」

「あぁ、アレね……」

「どうしたんだよ」

「いやさぁ~、その現場に俺も居たんだけどよぉ~。あれはマジでヤバかったわ!」

「そんなになのか?!」

 そのとき、どこか遠くから銃声が聞こえる。

 しかし、2人はそれを無視して話し続ける。

「へえ、そりゃヤベえな」

「そうだろ?」

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