3たび星々の欠片

テンプクくん

 雄一はごく普通の少年である。

 エスカレーター式の学園の初等部に通って、メガネを取れば美少年だが、勉強も運動も中の下。

 そんなかれが家で夜空を見ていると、何かが迫ってくる。

「な、なんだなんだ!?」

 窓を割ってやってきたのは、宇宙から来たテンプクという丸っこい毛玉のようなやつだった。かれ?が言うには

「この星に落ちてきてしまたんだ。しばらくここで泊まれるかな?」

「お安い御用だ」

「ありがと。お礼にいろんな星に旅行しよう、いっしょに」

「わあ、ほんと?」

 そんなわけで、テンプクと雄一の冒険が始まる。


 ある時のこと、テンプクの乗ってきた宇宙船が故障してしまう。修理するには部品がいるのだが……。

「えーん、ないよぉ!」

「泣くな!きっとどっかにあるさ」

 しかしなかなかみつからないのだ。そこでテンプクは

「ぼく、自分でつくる!」

 と言い出した。

 材料を集め、部品を作り、組み立ててみるがうまくいかない。

 失敗作ばかりが増えていく。

「あーっ、もういやだぁ!!」

「元気出せよ」

 そこへふらりと宇宙人が現れ、あっという間に部品を作ってくれた。そして部品を渡してくれた。

「いいのか?」

「ああ、君たちはおもしろそうだからね」

 そういうわけで部品を受け取った二人は旅を続けられるようになった。

「ありがとうございます!!」

 雄一とテンプクはぺこりとお辞儀をした。すると宇宙人はにこっと笑って言った。

「ではまたどこかで会おう」

 そして彼は去っていった。やがて、二人は完成した宇宙船に乗って飛び立った。

 しばらく、宇宙空間を進んでいくと、突然大きな宇宙船が現われた。

「見つけたぞ!この裏切り者めが!」

 宇宙船から声が聞こえた。

 なんと、あの時の宇宙人を追ってきたものらしい。

「おまえのせいでわれわれの計画は大幅に狂ったのだ!」

「何の話ですか?私たちはあなたたちとは無関係です」

 テンプクと雄一を乗せた船は、なんとか逃れようとしたが逃げ切れない。その時、どこからともなくもう一隻の船が現れた。その船の船員が叫ぶ。

「こっちに来い!早く!」

「よし、いくぞ!」

 二人は急いで船内に乗り込んだ。

 宇宙船の中にいたのはさっき助けてくれた宇宙人。事情を聞くとこう答えた。

「ああ、あれは私を追いかけてきたんだ。私の敵だね」

 二人はホッとした。これで一安心と思った時、宇宙船が大きく揺れた。

「大変だ、追手が来た!」

 あわてて二人は外へ出る。そこに待っていたのは二隻の宇宙船。しかも両方とも攻撃してくる。

 テンプクと雄一が戸惑っているうちにも攻撃は続く。

「危ない!逃げろ!」

 宇宙服に身を包んだ船長らしき人が叫んだ。それに従って二人は近くの小さな宇宙船に乗り込む。しかしそれでも敵の攻撃は止まらない。

「おい、このままじゃ船がやられる!」

 テンプクと雄一は宇宙服を着て、外へ飛び出した。するとそこには巨大な隕石があった。

「これを盾にするんだ!」

 船長が叫び、二人で岩にしがみついた。

 激しい衝撃のあと、敵の宇宙船は去った。しかし二人の乗った宇宙船も壊れてしまった。

「どうするんだよ!?これじゃ帰れないじゃないか!」

「うーん……」

 途方に暮れる二人の前にまたあの時の宇宙船が現れた。そして言う。

「ほら、私の星へ帰るよ」

「いいんですか?」

「ああ、お礼だよ」

 こうして二人は宇宙船に乗って家に帰った。

 家に帰ってからは大騒ぎだった。雄一の母さんは泣き出すし、父さんは警察に電話しようとする。テンプクの家族だってびっくりした。でもみんな喜んでくれた。

「やったな」

「うん」

 2人はニッコリと笑いあった。

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