第十六話 クラス内対抗戦②
今日から一週間授業はお休み、それはその後に待っているクラス内対抗戦の事前準備にメンバーの戦略や、役割を確立する為である、同じ場所で他チームの練習を見ることは他チームの戦法を見ることが出来る、それは出来る限り避けたい、それはいざ戦闘になった際相手のことを知っての戦いなどほとんどがないからである。
そんなチームへの時間を有意義に使うかどうかは各チームに任せると、そこまでを見るのがクラス内対抗戦なのである。
「それで、配当は前衛二枚の後衛二枚の残りの一人は補助でいいんだよな」
ウィルの部屋にてジェイス、スミュール令嬢、ウィル、そしてジェイスの前の席のグラン、スミュール令嬢が連れてきたレミアの計五人が会談を行っている。今だけ特別に日中であれば男子寮への女子の立ち入りその逆も許可されている。
ベットに座るジェイスとウィル、机を挟み反対側にスミュール令嬢とレミア、その横にグランと机を囲んでいる。ざっとメンバーの自己紹介が終了した時点でバランスが良いチームだと分かった。
「て、なると俺とグランが前衛でスミュールとレミアが後衛、でウィルが補助でいいのか」
昔からジェイスは前衛を全うし、拳という武器は己の手という戦い方でやってきた、魔法も打てなくはない、ただ両手杖を構えるレミアと片手杖のスミュール令嬢に勝るほどではないと。それに加えソードとシールドの両方を扱うグランが前衛として適任となった、残ったウィルだが補助に回った理由は主に二個、前衛で戦うにしてはあまり不向きなショートダガーを持つこと、全体を見る幅広い視野と思考能力を持つこと。補助は全体を見て大勢を整えるものが適任であるとなった。
「ちなみにスミュール令嬢は水属性と炎属性が扱えるんだよな」
「えぇ、そうですわ」
てなると後衛アタッカーはほぼレミアが補うことになる。
レミアへと目を向けたジェイスだが問題はないようであった。
「レミアは詠唱魔術を得意とするから破壊力はクラス一と言っても過言ではないですわ」
「そうか、では配置は確定でいいな」
立ち上がるジェイス、この先のことも考えてあるようであった。いくら強いものが集まっていても魔物と演習とまではいかないため、クラス内の別チームと行うか、別クラスのチームと戦うか、そのどちらかとなってしまう。
ただジェイスは別のあてがあった。
「とりあえず闘技場へ向かうか」
初日から戦闘練習を行うチームなどほぼないと言っていい、だからこそこのタイミングで闘技場を貸し切りするのだとそういう。
数時間ののちコロシアムへと到着する五人だが、先に到着していたあるメンバーたちに驚いた、それは別チームではなければ別クラスのチームでもない、それは二年生の中でも有名なあるパーティーだった。
「ほぉ~こやつらがジェイスの友か」
横並びに並ぶ男女五名の内、ひときわ目立つ唯一一人の女性がこちらを見ながらにやりと白い歯を見せる。
「おいおいケンカしに来たんじゃないぞ」
中央を陣取る図体はさほど大きくない男性が女性の方へ眼をやる、本当に彼らはジェイスに誘われてこの場にいるのか。
「デリー先輩、学校まで休んでもらって申し訳ないっす」
ジェイスが誘ったというのは本当のようだった、手御すり合わせながら中央の男性へと近づいたジェイスの首に腕を回すと笑いながら、「なに面白いものが見れるというからな」と高々に笑い二年生の余裕さが見て取れた。
面白いもの、学校を休むほど面白いものがあるのかと疑問に思うジェイスのほか四人。しかしジェイスの言う面白いものとは紛れもなくウィルのことであった。
「早速だが、俺がこのパーティーを率いるデリーだ、で左からクロ、ケン、ユウガ、サトリだよろしくな」
左から肩幅がやけに広く、スキンヘッドに丸めた頭が際立つthe漢という感じである、その横のケンは体は細いが背は高く、しゅっとした白い服によく似合う青色の本を持っている、その横にクロよりも細く、ケンよりはがたいがよい全体的に見て平均的な男性がデリー、その横にメガネがよく似合う鋭い目つきのユウガはどこか隠している力を持つかのように自分をあまり明かさないという雰囲気がある。そしてパーティー唯一の女性は茶色く光るロングヘアーをポニーテールに結び、やんわりとした表情、先ほどのセリフは本当にこの女性が言ったのか、と不安になるほど従順そうな見た目である。
「俺の仲間のレミアとグランとスミュール令嬢、そしてウィルだ」
1つ頭を下げ、ジェイスを睨みつけたのは少なくともウィルだけではないはず
「あ、あぁそうだよな」
彼らのパーティーは学園に入る前から結成されていた、当時は市街地の見回りを基本にCランク以下の依頼、主には薬草採取や小動物の捕獲などを請け負って生計を立てていたらしい。年齢はウィルたちとさほど変わらないというのに、とは言ってもジェイスもウィルも似たような境遇であった、これは膨大な国家だからこそ起きる差別が生む結果であるがウィルたちもデリーたちもそれを憎んではいな、幼少期から知識を身に着けるのは大人になった後に間違いなく差を生む。そしてそんな境遇同士だからこその縁もある。入学前日にジェイスは既に彼らとコンタクトを取っていたらしい、ウィルとジェイスは入学式の際もずっと一緒だったのだが、一瞬お手洗いへと席を外した時にデリーから話しかけられたそうだった、ジェイスは気づかなかったが森で一度迷子になった際助けてくれたパーティーが彼らだった、ジェイスの記憶が正しければもっと大人しい格好であったのだが、彼らも何かが変わったのだろう。ただジェイスの方は見た目から性格までほぼ変わっていないと彼らは言う。
「それで、ひそかに連絡を取り合ってったことか」
「あぁその通り」
予想通り本日の予約はなし、夕方までウィルたちの貸し切り状態だ。
始めは準備運動ということもあり、一対一で軽くアップをすることになった、今はレミアとケンがお互いに魔術を掛け合っているようだった。
「にしても、二年とって、練習になるのかな」
「なに、俺らもまだ青二才、対して実力に差はないだろう」
どう考えても差しかない、今組手を行っているのは力の差がわかりずらいサポーター同士、ただ明らかにレミアが押されていると分かる、攻撃魔術は一切使用していない、なのにもかかわらずだ。
「まぁ俺らも少しは力を合わせるからさ、問題ないさ」
「まっあたしたちが負けることはまずないけどね」
と組み手が終わったのかレミアとケンがこちらへと戻ってきた。
「いやぁ、入学してまだ半年もたっていないのになかなか腕がいいじゃないか」
かなりの好評であった、実際ケンのおでこにはじんわりと滲む程度に汗が垂れていた、そこそこ体を温めるほどの組手が出来ていたらしい、対するレミアはぜいはーとかなり息を荒くしていたが。
「よし、じゃぁジェイスとクロ次行こうか」
「はいよ」
「んじゃ、仲良く話しといてね」
ジェイスも組手をするのは実は初めてである、連絡は魔術や学園内伝書鳩を使えばできるが実際に話すのは厳しい、一年次だからこそ、時々の休みはある者の二年次三年次になるにつれ休みの日は0と言ってもよいほどに無くなる。会って話すのも三回目であったのはあえて言わないで置いた。
フィールドに立つ二人はお互いに似たように素手で戦うらしいが何かがちょっと違う気がした、それは組手の始まる前構えのポーズが明らかに違っていたからであった。
ヒカリ ~生まれ変わる世界の地、七つのヒカリが揃う時~ なもなき光 @namonaki_hikari
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