差別
異世界出身の私は、場に溶け込むようにと、新たな名前を与えられた。
シエラ・ナターリス、と。
上品で何処かのお嬢様のような落ち着きのある名前。
常に名前にコンプレックスを抱いていた私は、それなりに嬉しくはいたが…、
「こんなの、聞いてないよおおおお‼︎」
テレサ先生による伝言で、取り敢えず貴方を、日本に帰す方法を模索してみるからその間、魔法学園に通うってのはどうかしら?ということらしい。
…っあの馬鹿魔女め。確かに、魔法とかに憧れというものはあるが、それとこれとじゃ話が違う。
だが、
「ステラさんと同じクラスなのは嬉しい…ですねー」
「…まあ。貴方とは、あまり喋れてなかったから、こうして喋られる機会が、与えられるのは嬉しいわね」
あの蚊取り線香の件で、ステラさんへの好感度があれ以来、倍に上がっていた。
ステラさんは優しくしっかり者で、学園をちゃんと隅々まで丁寧に案内してくれた。凄く良い人だなあ。美人だし頭も良いし、運動神経まで良くて、おまけに魔法学園の特待生の内の一人!…ああ。憧れちゃうなあ。
「シエラ」
すると、突然名前を呼ばれ、顔を上げると優しい声音でステラさんが私の手を取り、言い出す。曰くー
「とにかく。なんでも良いから分からない事があったら、私に聞いて。私でも貴方の助けになれるのなら、それはそれで嬉しいわ」
微笑んで私に子守唄のように語りかけてくるステラさん。ああ。心が浄化されていく…。本当にステラさんは女神みたいな人だなあ。
異世界に無理矢理来させられて、混乱の状態に陥ってる私に、救いの手が差し伸べられ…
「…シエラ。あの…全部声に出てるのだけど」
「もう、ステラさん。もう最高ですよ。可愛いし優しいし…」
「…ちょっと何を言っているのか分からないし。やめてくれないかしら。」
ああ。ツンデレ助かるわ。だが、こうして馴れ合っている時間も一瞬にしてとある人物が来たことにより、終わりを告げてしまった。
それは明らかなカースト差。
「邪魔よ、ステラ。星精族の貴方がここにいるのは、超不快なんだけど」
私とステラさんが話していたのを狙ってか、小言を挟んで割り込んで来る、数名の女子生徒の姿がいた。星精族。…はっきり言ってしまうとよく分からない民族だが、話を聞いてると、民族差別の類だろうか。
「………そこをどけばいいのね、はい」素直に、立ち去ろうとするステラさんに
「あとそれと、出店で卵のサンドウィッチでも買って来てくれない?勿論。貴方のお金でね。あはははは」と嘲笑う女の子達。
「ちょ………」
それ、今考えて言ったセリフじゃないの!?
と思って言いかける。
だがしかし、情けないが、怯えて声が出ない。コミュ障による怯えなのだろうか。それともただ、私に勇気が足らないだけなのかもしれない。
女の子達は、ステラさんと一通り話をした後に、今度は私の方に、向き直る。なんだろうと後退りつつ警戒をしていると…
リーダー格であろう中央にいた、女の子が、私に向かって大声で言った。
「それとシエラさん。君に忠告。ステラと仲良くなっても、きっと後悔するよ。だって彼女は星精族なんだから」
お風呂に入っていたらいきなりですが異世界に転生されました あすーる @12195543
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