「つまり、こちらの白髪は異世界の出身、だということなのね」


テレサ先生の、服を着た私とテレサ先生の前に突如として現れた、乱入者ーテレサさん。赤髪の毛先は青のグラデーション。瞳は毛先の色と同色で青。しかもかなりの美人さんだった。


「そうそう!だから私がシエンナを押し倒してたってのも、考えたら納得出来るわよね!?」

「……ええ……………まあ、そうですね」

「何でそんなにカタコトなのかしら……」


いや、納得出来ないだろうが。どう考えても。

逆に納得出来てしまったらそれはそれで、怖い。

さて、ところで少し話は変わるが、この場にそぐわないことを、どうか私に言わせていただきたい。私、雪島シエンナはー。実は今、私たちは、三人でお茶会を開いていた。案の定、お茶会をしようと提案したのは、勿論、テレサ先生本人からだった。薄々感じてはいたが、やはりあの人、どこか人とはちょぴり変わってる。

 

「ていうか、先生って。この学校の校長先生だったんですね」


ステラさんとテレサ先生との話を聞いてみて分かったことが、二つある。

一つ目はここが夢の世界ではないということ。前にテレサ先生に押し倒された衝撃で伝わったあの痛み。あの衝撃を痛感した私は、ここが夢ではないということを確信した。

二つ目は、お茶会をしているこの場所が、魔法を扱える生徒のみで集められた、由緒正しき学園であるということ。そして率直にこの学園は、聞いた話によると、魔法学園という名称らしい。この学園の名前、いくらなんでもさっぱりしすぎだよな。


「で、先生。私、もといた日本に早く帰りたいんですけど。元はと言えば、先生が召喚魔法で、間違えて私を召喚しちゃったのが悪いんでしょ。責任取って下さい」

「そう言われてもねえ…」

「…どうしてシエンナは、私相手だと口籠るのに、テレサ先生相手だとこんなにも気楽に喋れるのかしら?」


文句を投げつける私に、どこか不満そうなステラ。

ごめんステラさん。私コミュ障なの。

そんな私たちにテレサ先生は口を尖らせながら、ため息をついて言い放った。


「………あのねえ。大変言いづらい話なのだけど、貴方をその、日本とやらに帰らせるには貴方を日本に転送させるための、召喚魔法の魔法陣を発明するのに、早くても百年はかかるのよ」

「ひゃ、百年!?」


私は、その場で愕然としフリーズした。

百年。というワードが一斉に脳内を埋め尽くす。

あ。あはははは。ははははは。百年、百年かあ。結構、厳しいなあ。


プーン………


「あら、やだ。ちょっと蚊がいるじゃない。ねえ、シエンナ!蚊取り線香持って来て!」

「……私がやります。先生」


空気を読まないテレサ先生に、気を効かせたステラさんが近くにあった戸棚から、蚊取り線香を取り出して、マッチで火をつけた。ありがとう。女神…


「どうも私は、火魔法が使えないもので。それに比べてシエンナは凄いわね。見ただけで分かるわ。貴方、魔力値が普通の人の、倍以上あるもの」

「え、その話詳しく!」


もしかして私にも凄い才能が!?え、嘘でしょ。なになに気になる!!

と、私が机に身を乗り出したとき


「ふふ。知りたいわよね。自分が魔法が使えるのかを」


言いながら、いやらしい笑みを貼り付けたステラさんが、既に私の方に迫って来ていた。…なんだか嫌な予感。胸奥がやけにぞわぞわとする。

そして、その予感は見事に的中することとなった。



「……シエラ・ナターリスです…」


新たに与えられた名前。黒板の前に立ち、私は自己紹介をする。

…そう。簡潔に話すと私はここの学園の生徒となってしまったのだった。

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