お風呂に入っていたらいきなりですが異世界に転生されました
あすーる
お家に帰りたい。
「あー、だりー」
とため息をついて、虚空を見つめながら私は家路へと、向かっていた。
齢17歳、私、雪島シエンナ(キラキラネームじゃない。ハーフなんだよ)は
常にこの、厨二病くさい名前でクラスメイトにはからかわれ、挙げ句の果てにはコミュ障と、外国人離れした顔立ちからか、クラスでも孤立してしまっていた。
高校生デビューで、キラキラした学生ライフを送れるかもしれない!と脳内お花畑思考で夢見ていた過去の私、…正直、ぐーで殴ってやりたいわ。
やっぱり、人間ってそんな直ぐに変われるもんじゃないよなあ。
「ただいま〜…ってあれ?お母さん帰ってきてないな」
まあそりゃ、鍵で開けて入ってきた時点でいないのは確定演出だよな。
靴を脱いだ私は、廊下を歩き出す。
でもまあ。お母さんがいないのなら、この間、お婆ちゃんにお土産で貰った入浴剤を試してみるのもありかも。
実は私にはちょっとした、お風呂の楽しみ方というものがある。
「普段だとお母さんとかに怒られちゃうけど、たっぷり入浴剤を入れて、お風呂でその入浴剤から出るあわあわを楽しんで、んで漫画を読むのがまた良いんだよなあ」
要するに、シンプルイズザベストだ。
ちなみに、床にボディーソープを垂らして、スケートの様にして遊ぶという、手もある。だがこれは、昨日お母さんに怒られたばかりだし…。
そう思うと、私って結構、子供っぽいな…高校生にもなって自分が情けない。
「うーん。知りたくもない事実だったわ。さあーて、入ろーと」
かくして私は、服を乱雑に脱ぎ散らし、投げやりにも現実逃避をして、お風呂の扉を思いっきり開ける。
もくもくと出てくる湯気に、圧倒されて前が見えない。と、なっていた矢先に
しばらくすると要約だが、段々と前が見え始めていった。
「て…あれ………」
だが、そこに広がっていたのは、いつもの風呂場じゃなかった。
いきなりの出来事に呆然として固まる。
「何処………………ここ」
どうやら、ここは中世くらいの時代の木造りで出来た科学実験室のような場所で、いやしかし、まだ驚くのは早い。私以外にもまた、呆然としている人物が目の前にいた。
「あれ、私、もしかして召喚魔法間違えたかしら…」
なんてお婆ちゃんの母国語のスウェーデン語で言いながら、やけに魔女っぽい格好をした人が額に汗を浮かべている。ん?召喚魔法?間違えた?
「え、どういうことですか?ていうか貴方誰ですか?コスプレして人のお風呂に入っているとか、さすがの私でも、ちょっと引きますよ」
「ああああ………どうしよう。やばいやばい。どうしましょ。どうしようかしら〜‼︎」
「…あの。聞いてます?」
「んえ?……………ああ。あなたの話興味ないから全然聞いてなかったわ」
何だこいつ。ぶん殴ってやろうか。
にしても、かなりのコミュ障の私が何事もなく人と話しているということは、やはり夢なのであろうか。ていうかそうであって欲しい。じゃないと困る。
「…でもまあ、こうして悩んでても仕方がないわよね。貴方、名前は?」
よくこの状況で聞き出せるな。それに少し唐突過ぎやしないだろうか。
でも、もしかしたらこの人の言うことも、一理あるかもしれない。多分ここはどうせ夢の世界なんだ、と自分に言い聞かせせる。だから名前ぐらいは別に言ってもいいか。
「えーと…雪島シエンナです」
「あら、よろしくシエンナ」
「ん?あれ?私の名前聞いても笑わないんですね」
大抵の人は私の名前を聞くと声を上げて、笑うのに。
「別に笑いはしないわよ。何処もおかしい名前ではないじゃない。それよりも私が気になるのは………………ねえどうして貴方、裸なのかしら?」
「あ」
言われてみてよくみると…、ていうか思い出した。そうだった。私、全裸だったんだ。
「っ、どーして今まで教えてくれなかったんですかっ‼︎」
顔が熱くなっていくのが伝わる。私は魔女風の女、もとい全ての元凶である、奴の肩を掴んで、思いっきり揺らして抗議する。
「ちょ、いきなり何を…!?ってきゃあ!」
魔女風の女は私に揺られ過ぎたのか、体制を崩してしまう。って、私の方に転ぼうとしないでよ!?と思っていると、ふとこちらに迫ってくる足音が聞こえてきた。まずいって!?かなりまずい‼︎
「テレサ先生。少しお話しが………………て、何やってるんですか」
テレサとかいう、魔女風の女に押し倒されている私、しかも裸。もしかしてこれってやばい状況なんじゃ。
「あの………そういうのは先生。違う場所で…」
「……て、ちがーう!!!」
とにかく私はもうお家に帰りたい気分だった。
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