第4話 脱出
「さてと、これからどうする?まずはここから脱出しようか」
「そんな簡単に脱出できますかね?ここ、何かの魔術がかけられていて、壁とかもかなり丈夫ですよ?」
「この程度、俺に掛かれば余裕だよ。それと敬語はもう必要ないと思うんだけど」
「流石ですね。敬語は癖みたいなものですので、気にしないでください。立場的にも私がタメ口で喋っているのを見られるのはあまり良くないですし。そのかわり湊斗君と呼んでもいいですか?」
「それはいいが、ここ異世界だし、もう家に縛られる必要はないんだぞ?」
「安心してください。別に家に縛られてこの喋り方をしているわけではありませんよ。湊斗君の言葉を聞いて私決めたんです。もう諦めたりなんかしないって。今は無理ですけど、近い将来、必ず湊斗君に相応しい術師になって見せます!」
葵衣のその言葉には以前のような迷いはなく、この6年で1番イキイキとしていた。
「そうか。そんじゃ、さっさととんずらしますか『転移』」
湊斗は転移魔術を実行し、葵衣と共に城から脱出する。
この国で最も賑わいのある王都、商業区に転移した。路地裏に転移したので、誰にも気づかれてはいないだろう。
「まずは飯でも食うか」
「そうしたい所ですが、私はお金を持っていませんよ?湊斗君は持ってるんですか?」
「安心しろ!さっき葵衣を乱暴に連れ出して、牢獄にぶち込むという暴挙に出た兵士の財布を拝借しておいた」
「手際がいいですね。少し気の毒ですが」
「俺の葵衣を雑に扱った罰だ」
湊斗はそういうと、葵衣は少し嬉しそうにしていた。
◇
2人は近場のレストランに入り、ドラゴンステーキを堪能した。
「いや〜こっちの飯も悪くねぇなぁ〜」
「ドラゴンの肉と聞いていましたが、少し硬い牛肉って感じがしましたね」
「味付けがしっかりしていたことに驚いたな」
「勇者様が伝えた調理法だそうですよ。お金がエンだったのは驚きました」
「それは俺も思った。おかげで分かりやすかったよ。にしても、過去にも召喚を行ってるってことだよな?異世界から人間を引っ張ってくるほどの大規模魔術をどうやって使ってるのかが気になるところだ。そういや、クラスメイトどうする?」
「正直、私は割とどうでもいいですね。友達とかいませんし。ただ、見殺しにするのは少し心苦しいですね」
「そうなんだよな〜俺もボッチだったけど、一応顔見知りのやつはいたしな。でも、正直助けられないんだよな。呪いを解くのは可能だけど、いまそれをやっても転移特典がなくなった無力な高校生になるだけだしな」
「助け方が見つかるまで放置でいいんじゃないですかね?湊斗君が出来ないことは私にも出来ませんし。転移特典がどれぐらい強いのかは分かりませんが、魔王軍とやらに虐殺されるほどではないでしょう」
「それもそうか。呪いで死ぬにしても3年ぐらいは生きれると思うしな」
「そうだ!呪いの力で体に負荷がかかるのなら、お守りとかお札を送って耐性をつければ良いのではないでしょうか?」
「なるほど。それはいい考えだ」
「そうと決まれば紙が必要ですね。紙って高そうですけど、買えますかね?」
「この国の相場が分からないからな〜。よし、金はまだそこそこあるし、今日はこの国のことにつして調べるか」
「それはいい考えですね。私も賛成です。あの兵士さんの財布の中身がたっぷり入っていたことに感謝しかありません」
2人はこの国について知るためにまずは図書館に行くことにした。
ちなみに盗んだ財布は1つだけだが、城を脱出する時に、透視魔術で宝物庫を発見したため、気づかれないように大量の金品や金を拝借している。
向こうの都合で一方的に呼び出してきたのだから、これぐらいのことはやっても罰は当たらないだろう。
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