第3話
「先生って生きてたときなにしてたの?」
「知らないな」
僕の言葉を聞き、なんとも言えない表情を見せる彼女を尻目にグラウンドを眺める。
紅白のテントが立ち並び、簡素ながらも入場門が作られていた。
「もうそんな時期か……」
「ん、体育祭のこと?」
「ああ。君は準備しなくていいのか?」
「んー、あたしは関係ないから」
───────不器用な愛想笑いだな。
嫌な頭痛がした。
「関係無くはないだろ。君もここの生徒だ」
「そーなんだけど……。なんてゆーか、ぶっちゃけ邪魔者?扱いされてんの。あたしって」
「そうだろうな」
「ひどっ!?」
「毎日幽霊とおしゃべりしているような奴がクラスに馴染めるわけがない」
「おっしゃるとおりで……」
えへへと困ったように笑う彼女に少し苛立ちを覚えた。
「いじめか?」
「全然。そんなんじゃないんだけどさ」
「なら君の……」
弱さだろ。
言いかけて、やめた。
きっと僕は過去に同じような過ちを犯している。
さっきから続く重く、鈍い痛みは僕のなかに深く刻み込まれた罪の証だ。
成仏できない所以もそこにあるのだろう。
「……君の、なに?」
言い淀んだ僕を彼女は不思議そうに見つめる。
ため息をひとつ吐いたあと、ニヒルな笑みを作った。
「君の卒業まで話し相手になってやるよ」
「……っ!」
「体育祭も僕と一緒にここで見とこうぜ。僕は二人三脚が好きなんだ。あの虫唾が走る友情ごっこは毎年見ていて飽きない。ムカデ競走もそうだな」
「ふふ、先生ひねくれすぎ」
「君は紅か白どっちを応援するんだ?」
「うちのクラス白組だし紅応援しようかな」
「……さっきのセリフよく言えたな。じゃあ僕は白を応援しよう」
丁度良かった。紅は嫌いだ。
「紅が勝ったら何してもらおっかなー」
彼女は僕と背中合わせで、いつまでも楽しそうに肩を揺らしていた。
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