第8話 溢れ出る包容力...?
私の名前は望月詩織、文学部に在学する大学1年生です。読書が好きで家の近くの本屋さんでバイトをしています。その本屋さんには、蔭山消太くんという男の子がよくやってきます。バイトを始めたのは高2のときからだから、彼とは約3年間の付き合いになります。好きな本のジャンルが似ていたりするので、話が合うのでとてもいい印象を抱いています。
っていうのは建前です。ふふっ。
実は私、消太くんを監禁しようと企てています。なぜかって?話せば長くなるのですが...
遡ること3年前、私が初めてのバイトであたふたしている時だった。
「お嬢ちゃん、新人かい?」
「え、あ、はい、そうですけど...」
急に気持ちの悪い男に声をかけられた。ちょうど本屋の一番奥、よりにもよって人が来づらいところで...くそっ。
「バイト終わったら、俺とお茶しないかい?」
「お断りします」
「またまた~、遠慮せずにさ~、ほら、ね?」
そう言って男は私の手を掴んできた。気味が悪くて吐きそうになった。
「ちょっと、やめてください、仕事中です」
「ちっ、さっきから舐めた口ききやがって、こうなったら...」
「きゃあ!」
男は無理やり胸元をまさぐってきた。ああ、死にたい。もうお嫁にいけない。
私が絶望していた時だった。彼が現れたのは。
「何やってるんですか、店員さん呼びますよ」
「なんだ?てめえ、チビのクセに調子のってんじゃねえぞ!」
「あっ!」
小さな男の子相手に暴力ですって?信じられない!ああ早く逃げて坊や!
男の拳が空を切り、逆に男に拳が撃ち込まれたのはほんの1秒足らずの出来事だった。男は一撃で気絶し、床にへたれてしまった。
「大丈夫でしたか!?」
「おかげさまでなんともないです!助けていただいて本当にありがとうございます!」
「念のため店員さんを呼んで...って、あなたも店員さんだったんですね!?」
「そうですよ、今日が初めてのアルバイトですけど...」
「そうでしたか...初日にこんな目に合うとは災難ですね...」
「本当にその通りです、違うところを探すとしま…」
「いいえ、その必要はないです!また僕が必ず守りますから!」
「えっ!?」
この瞬間、私は恋に落ちたのだ。いや、運命で私たちは"繋がれた"のだ。
その日から私は、バイトがあるたびに彼を待ち遠しく想い、彼が来るたびに心を躍らせた。
あの小柄な体、でも力は強い、そして何より溢れんばかりの優しさ…
もう好きという気持ちが止まらない。
もちろん将来のことも考えてある。1年後には結婚して、子供は彼が望むなら何人でもいい。結婚式はハワイで挙げて、新婚旅行は2人で入念に計画して...
考えれば考えるほど私は幸せを感じる。ああ早く私のものにしたいなあ。
そういえば土曜日も来てくれたな、彼は最新刊の発売日だとか言ってたけど、私に会いたくて来たのだろう。隠さなくてもいいのに。あ、でも高校生だもんね、そんな時期だもんね。しかたないしかたない。ふふ、本当にかわいい。
そういえば邪魔な存在がいるんだよね。名前は...御城?だったかな?
この女の名前を最近よく聞くんだよね~、彼のカバンに仕込んでいる盗聴器から。目障りすぎるんだよなあ。いっそのこと早めに消しておこうかな。でもどんな人かは知らないからそれはまだできないか。
だから私は彼を監禁しようとしているんです。他の有象無象なんかに取られては気が狂ってしまいますから。
...もしもここに一緒にくることなんてことがあればすぐに消せばいいもんね。
ふふっ、愛していますよ。消太くん♡
~~~~~~~~~~
ううっ、なんだか今日は寒いな。
陰キャに優しいギャルなんている訳ない! ネロちゃ @NeRor_
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