第6話 芽生える感情
今日は土曜日、一週間で最高の日だ。一日中何もしなくていいし、次の日も休みだし。ああ土曜日最高。
そんなことを考えながら僕は書店に向かう。なぜなら今日は好きなラノベの最新刊発売日だからだ!この日をどれだけ待ちわびたことか、発売日が決まってから毎日夜も眠れなかったんだからな!7時間しか。
そうして僕は書店についた。自宅から徒歩10分くらいだから散歩がてら来れていいんだよな~。立地も良くて本がたくさん並んでるとか最高じゃないか。まあとりあえず目当ての本を探しに行こう。
僕は10秒足らずでラノベの新刊を見つけた。まあ、通い始めて何年も経つから探すも何も場所を覚えてるだけなんだけどね。
「あ、消太くんじゃないですか!」
「詩織さん!こんにちは」
見知った女性に話しかけられた。
この人は望月詩織さん。この書店のアルバイトで大学1年生らしい。腰よりも少し上くらいまで伸びた美しい黒髪に大きな瞳と大きな...じゃなくて!とにかくすごい優しそうな見た目をしてて、見た目に反することなくとっても優しい人だ。僕が名前で呼ぶ家族以外の女性はこの人だけだし、何より心置き無く話せるという点でもこの人だけだ。
「今日は何を買いに来たんですか?」
「今日はこの本を…」
「あ、その本!いいですよね!私も仕事終わったら買って帰ろうと思ってるんですよ」
「そうなんですか!?僕もこの本とても気に入ってて!」
それから5分くらい語り合ってしまった。僕はともかく、仕事中なのにこの人は大丈夫なのだろうか。
「長々と話してしまいましたね...」
「そうですね...じゃあお会計お願いします」
「かしこまりました!」
無事購入に成功。今日は好きな本の話も出来たしいい日だな〜。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
土曜日ということで私は楓とショッピングモールに来ていた。服を買いたいとうるさい楓に付き合わされてるだけなんだけどね。
「これはどうかな?」
「いいんじゃない?」
「これは〜?」
「いいんじゃない?」
「む、適当でしょ、センスのある人に見繕ってもらいたくて明音を呼んだって言うのに!」
「あ〜、ごめんごめん、ちゃんと見るね!」
私のことをセンスいいって言った?この子、いい目をしてるじゃない。ちゃんと見繕ってあげるとしましょうかしら。
そうして3時間くらい服屋さんを回り、帰る頃には両手が塞がるほど服を買っていた。私は付き添いだけのつもりだったけど、かわいい服をたくさん見つけちゃって結局いっぱい買ってしまった。
「たくさん買ったね〜」
「ね、私買いすぎてもうお金ないんだけど」
「私も、今月もう何も買えないかも」
「終わったね、ウチら」
お金のこと、考えてなかった。今月は節約して生活しないといけなくなった。
「じゃあね!また月曜日!」
「うん!またね〜!」
そうして楓と別れた。今日は楽しかったな、久しぶりにこんなに買い物したかも。
ピロン。
ん?連絡?お母さんからだ。「おつかいおねがい。」
...仕方ない。帰り道にスーパーにでも寄ろう。
そして、彼の姿が見えたのは本屋さんの前を通った時だった。
あれ…?蔭山だ!休みの日に会えるなんて最高!話しかけに...ってあれ。
誰だろう、その横にいる女は。何?そんな笑顔で楽しそうに話して。私にはそんな笑顔見せたことなくない?というか、女の子と関わりないんじゃなかったの?それとも嘘ついてたの?ねえ?どうして?何してるの?ねえ...ねえ...ねえ!!!
「はっ!何!?」
私は急に人格が変わったような感じがした。自分でもびっくりするくらいどす黒い感情が湧き出てきていた。嫉妬はするけど、そんな言葉では表せない程の感情が。
なんだろうこの感情。なんだったんだろう、さっきの私は。
私は怖くなったので、さっさと頼まれたものを買って急いで家に帰った。
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